詩と真実・・・

マーケット三国志

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2006年02月27日

「アメリカ」(いちば)

先週、丸の内のブルームバーグで行われた債券の投資見通しセミナーに行きました。
テーマは「グローバル債券市場の動向とアセットアロケーション」。
講演者は長く債券運用に携わってきた元海軍中佐のアメリカ人。
「日本の皆様には米国債を大量に買っていただいており、ありがとうございます。
米国債券市場は、日本の投資家の皆様のおかげで成立っております」というリップサービスもありました。
興味を持ったのは数年後の米国の景気動向。
実質可処分所得の前年比は低下。
家計における負債比率は増大。
民間部門の設備投資伸び率は鈍化。
住宅着工件数は低下。
民間企業の在庫は増加。
そして、連邦政府の購買力は低下。
財政収支は大赤字。
となると・・・。
やはり、マネーの行き場はアメリカではないと感じました。
考えたのではなく「感じた」のです。
米国金利は上がらず、為替はドル安。
これは、80年代後半から90年代と酷似した状況。
もっとも、カウンターは日本ではなく、中国ですが・・・。
再び騙されてはいけないと思います。

週末、興味深いメモを頂戴しました。
「なぜ世界同時好況が持続するのか」という質問と解答です。。
グローバル化とIT、世界人口の持続的拡大、世界的低金利などについてのコメントです。
その中で、市場に影響が大きいのは「戦争経済」という指摘がありました。
確かに、ブッシュ政権の国防予算は2001年の2945億ドルから2006年5139億ドルに増加。
このばら撒きは大きいものです。
そして、アメリカは「モノをつくらないマネーゲーム国家」との分析でした。
確かにGEの利益の5割、GMの利益の大半は金融。
考えてみればライブドアもこの方向性でした。

そして日本。
面白いのは1980年末と2004年の対比。
国連分担金11%→19.5%。
海外援助10億ドル→60億ドル。
国防予算300億ドル→456億ドル。
対外純資産2400億ドル→1.8兆ドル(14年連続世界一)。
駆逐艦53隻→護衛艦54隻、哨戒艦7隻など138隻保有。
これだけ進展したのに、世界での発言力は薄いところが不可解です。

それにしても・・・。
上流社会のスポーツであるフィギアスケートでようやくの金メダル。
スポーツとはいえ、国家間の戦いです。
スケートなどは、得点に主観的要素が大きいので、国家間のパワーがメダルに与える影響は大きい筈。
そこで活躍できる日本は本物となったとみることも出来ます。

結局、外国人は日本株が欲しい。
これが結論のようです。
対する日本側の行動は?
金法と事法の株式持合いへの回帰という指摘があります。

依然として「株不足」。
ここでの逆襲に期待したいところ。
2月の月足が陽線となると・・・。
これは強烈に強いマーケットです。

2006年02月21日

「山より大きなイノシシ」(いちば)

サクラ吹雪のサライの世界を待ちつつも「凍ったマーケット」。
ライブドアが邪魔しているといっても、それも「マーケット」。
欧米の高値を横目で睨めながらの「辛抱」というのが現実です。

コメントは「ライブドア事件に端を発した東京市場の不透明感を嫌気したマネーが欧米回帰を始めた」。
確かに、そうでしょう。
でも問題は「日柄」。
「山より大きなイノシシは出ない」とは、ある市場関係者の言葉。
東京市場は一時的にそのキャパを越えたという見方があります。
勿論、日本企業のファンダメンタルズは良好。
でも調整モード。
ということは、一時的に日本株は山よりも大きくなってしまったということ。
投資に完璧な法則はあり得ませんが価格の連続性は、不連続線にはなり得ないという見方は、案外正しそうです。

月曜の1面は「堀江被告一両日中に再逮捕・・・上場廃止は不可避」。
日曜のテレビなどを見ていても「落としどころ」がはっきりしません。
むしろ「鋼材16年ぶりに5000万トン台」の方が経済紙としては、トップにあって欲しいところ。
そういえば、新日鉄は、個人株主向けの工場見学を始めたといいます。
「遅すぎる」の声も聞かれますが、まずは一歩。

政界は泥試合となってしまいました。。
メールの信憑性を問う前に、銀行口座の履歴を調査すればいいのに・・・。
と、誰もが思います。
民主党も要求しました。だが、自民党は首肯しません。
不思議なことです。
意地の張り合いなのか、何か不都合があるのか・・・理由は定かではありません。
この程度の戦や喧嘩すらマトモに出来ないのならば、国際社会では発言権もありません。
だから株安という見方もあります。

週末、NHK大河ドラマにもなっているので「功名が辻」(司馬遼太郎)を読み返してみました。
よくよく出世する山内一豊の都合良さには感心。
それよりも、夫が馬を買うために黄金十枚を使った妻の心情はなかなか鋭いもの。
「馬などはどうでも良い。誰もが瞠目する馬を買って評判になることが大事」。
確かに評判は、夫を出世させ、後年は小学校の教科書にも取り上げられました。
モノの本質を見る目は大切です。

月刊文春では「ライブドアは挫折者たちの集まりであった」とのコメント。
しかも、04年以降組織は歯止めが効かなくなったと。
この手の話は、ライブドアに限らずどこにでもあります。
例えば、ある中小証券。
派手な宣伝で、新高輪プリンスに1日で1万人の投資家を集めました。
これが絶頂。
その後、金融庁の検査などで失策を指摘され、今ではその名もなくなってしまいました。
現在の名称は「ライブドア証券」というのも不思議なめぐり合わせです。
秀吉の醍醐の花見。
信長の京都御所での馬揃え。
ライブドアの忘年会の映像。
不思議と「月満つれば欠ける」ものです。

相場師是銀氏を描いた「相場師一代」。
その中の言葉。
「過大な思惑はせず、手持ち資金の中で行動する」。
そして「株価には妥当な水準がある。値上がり株の深追いは禁物」と。
乖離への戒めに他なりません。
企業も株価も同様なのでしょう。
やはり「山より大きなイノシシ」はいないのです。

2006年02月13日

「日脚」(いちば)

マーケットは泥濘。
ライブドアの売り物を筆頭に、マーケットは盛り上がりに欠ける展開でした。
UBSによるソフトバンクの投資評価引き下げもネガの主役。
地政学的にはイランと北朝鮮の危機。
NYでの68センチの豪雪やイタリアでの鳥インフルエンザなど「これでもか」攻勢です。

ある著名なトレーダー氏は言います。
「ライブドアの二段下げですけど・・・。でもキャッシュを握った個人投資家は強いですよ」。
実際、昨年以来負け知らずの投資家から「今はオールキャッシュ。そろそろ不動産の株がいいと思うんですが・・・」との電話。
市場関係者が考えるよりも遥かに個人投資家は逞しい。
プロからは「何も買いたくない」のメール。
今のところ明らかにプロの負けのようです。

日経日曜の朝刊は、毎週・京都の興膳宏先生。
氏は京大教授から京都国立博物館の館長を歴任された碩学の人。
先週は「日脚」について触れられて、「本来は雲間を洩れて差しかけてくる光の線」とのお話。
「近頃はとみに時間的は意味で使われることが多くなった」とコメントされています。
今週は「下流」。
本来の意味は論語の子貢が言った「君子は、下流に居るを悪む」とのこと。
つまり、貧しい世界のことではなく。倫理の問題と言われます。
数年前、上賀茂神社でお会いした際には、それこそ「杜甫」を髣髴とされる風貌でご高説をいただきました。
株の世界では「日脚」は時間的な意味で使います。
逆に光を差し込ませる「日脚」銘柄というような使い方が出てくると明るくなるんですが・・・。

4月からの月9は「トップキャスター」。
「ラストクリスマス」以来1年半ぶりに矢田亜希子が登場します。
設定は報道現場ですからテレビ局。
すると、こじつけ的にはテレビ局が要注意と読めます。
日テレはドコモと提携しましたが減益。
フジ・テレ朝・テレ東の3社は増益基調。
TBSは東京エレククトロン株の売却益で純利益は増加。
もっともフジはライブドア株の評価損を抱えており、着地はなんとも言えませんが・・・。
パソコンや携帯などハードの拡充は進展していますが、ソフトの面の拡充は今後の課題。
その意味からは、春の「トップキャスター」というのはなかなか時宜を得ています。

あるミーティングで近い将来電話は無線LANが主力になるとの話。
光の設置に比べれば、コストは半分以下。
携帯とパソコンと電話が有機的な結合をするという世界になります。
すると、「光」の先にはもっとも大きなものがあるように思えてきます。
少し先までの「日脚」は必要でしょうが・・・。

今週は、大和投信の設定期待。
14日が京都応援ファンド「きらめきストーリー」(上限500億円)。
15日が「ダイワ・バリューアップ・ファンド」(上限1500億円)。
苦しいときの投信頼みでも少しは通用するのではないでしょうか。

2006年02月06日

「投資家不在」(いちば)

立春を過ぎたというのに、寒い日々。
マーケットの暖かさとは裏腹です。
日曜日のサンプロを見ていたらみずほの前田氏が登場。
1兆円増資の毀誉褒貶はともかくとして、結果は大成功。
結果を出した顔が誇らしげでした。
感嘆したのは、朝の出社は6時半。
誰よりも早く暗いオフィスに出社し、コピーや電灯をつける姿は、明らかにサラリーマンではなく経営者。
この姿勢は大切です。
過酷な労働を強いるつもりはありませんが、経営者と労働者の違いはまさにココ。
日経新聞の調査では、37%の人が自分は下流と考えているという結果が出ていました。
経営者意識を持って行動した上での下流は問題です。
でもそうでないのなら・・・。
自虐的な下流意識は必要なしではないでしょうか。

あるデイトレA氏から怒りのメール。
「評論家のB氏と助言契約を1年ほどしていました。
言うことはでかいが奨める銘柄はセコイ。
大きいことを言って強気を示すくせにほぼ毎週のレポートではセコイ小型銘柄を推奨してくるのです。
また私は一番会費の安い毎週1回レポートを受け取るだけの会員でしたが、どうも会費の高安で優遇度が違うと感じました。
それは経営者にとっては経済合理性に沿った行動と言えるのでしょうが、高い会費の会員に安値を仕込ませた後、安い会員にその銘柄を推奨する、というパターンがあったように感じます」。
今でもこんな投資顧問が横行しているとなると、まともな投資顧問には迷惑な話です。

外資系アセットと国内証券の記者会見。
「ウーマノミクスに着目した」ファンドの設定発表会でした。
1月の募集金額は556億円とのこと。
すべてが純増ではないでしょうがそこそこの額でした。
投信の新規購入層は約2割といいます。
ただ、平均年齢は60歳代。
ここが依然として投信の問題点と思いました。

ただコンセプトは面白いもの。
「女性力と女性力スコア」が銘柄選択基準。
キーワードは「消費力」と「労働力」。
ここまでは「売り手の論理」としては及第点。
だが、本当の意味で、コンセプトを理解した投資家の増大を望みたいところ。
「投資家不在」がまだ気にかかるtころです。

席上、あるフリーライターは「どんな銘柄を買うのか」との質問。
今日設定の投信の銘柄は常識的には質問しません。
それは、巨額の資金を動かす投資家に向かって「どの銘柄を買いますか?」と聞くようなもの。
答えられる筈がありません
聞く前に自分で勉強するのが筋。
女性採用比率や管理職比率、育児休業などとコメントしているのですからスクリーニングすれば自ずと見えてくる筈。
その意味では、マスコミのレベルは低いと言わざるを得ません。
売り手の論理横行とレベルの低いマスコミで、投資家はますます不在となってしまうかと思うと悲しい限りです。

先日、大阪でセミナーを行いました。
終了後、杖をつかれた重厚な紳士がこういわれました。
「あんたの話は、ことごとく胸に突き刺さった」
怒っているのかと思うとまったく逆。
「長年株をやっておるが、本当に株価が上がりきるまで買えない。
直そうと思ってもなかなか出来ないもんや。
本当に同じ銘柄を買っても、天と地の差になる。
それと、株は麻薬みたいなものやなあ」としみじみ。
去り際に「ほんでも今年も儲けるで」と。
こういう投資家の論理を専門家や評論家にも幾分かは理解して欲しいものです。

3月からは地方行脚の予定。
たくさんの投資家の地に足のついたご意見を伺ってこようと考えています。