詩と真実・・・

マーケット三国志

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2005年12月26日

「宴(うたげ)」(いちば)

世間の宴はクリスマスツリーから門松へと移りました。
でも、市場はあいかわらずの「元気一杯」。
来年の歌会始の御題は「笑み」。
まさしく「笑う」年の予感となりました。

経済紙の「春秋」氏は言いました。
「1年の最後の1週間が半ば休日モードになってきた・・・」。
???
確かに事業法人はそうかも知れません。
しかし市場は30日まで開いています
最後の1週間が付け足しとは決して思えないのですが・・・。
「最近の春秋氏はどうしたの?」という声も聞かれます。
先日は、ジェイコムで儲かったマネーは寄付すべきとの言。
市場はそれほど高邁ではないでしょう

業界の先達は指摘されます。
「ニューフェイスの投資家は株の恐ろしさを知らない。
おそらく来年3月の配当取りの近辺に調整がある。
そのときの準備が欠けている。
目一杯買うのではなく、腹八分目。
追証の準備の大切さを知ることが重要だ。
でないと、投げですべて終了。
その後の上げ相場に付いていけない」と。
長年の経験則に裏打ちされているだけに含蓄があります。

暫く前までは日本経済は支店経済でした。
各地に支店を置き、そこで本店の意向を伺いながら、利益を育むというのが当たり前の世界。
日本国中、あるいは世界中、支店という名の企業経済が成立していました。
ところが、この数年、ITとロジスティックスが発達しました。
日本経済は出張経済と化しました。
それは、新幹線の日常的混雑や飛行機の満席状態からも理解できます。
また、だからこそソーケンがホテル経営のコンサルができるほど、ビジネスホテルが乱立しても潰れないのでしょう。
出張経済がアネハ問題を助長したとも言えなくはありません
大半のことは電話とメールで完結し、商品の物流には宅急便が活躍する。
時間はそれこそ価値。
Time is Moneyなのです。
だからこその「1秒の戦略化」・・・。
一時は2時間ですが、今や分秒を争う世界。
M-1グランプリでさえ、4分間の勝負なんです。
マーケットの1秒を戦略化していくと、究極的には、ジェイコムが大量に買えることになるのです。

ある外資系アセットマネジメントの2006年マーケット展望のセミナー。
大型セクター、中小型セクターともに「超強気」。
今年の回顧については、どちらの担当者も「想定外」とのこと。
大型セクターは「想定外の上昇」、中小型セクターは「さほど上昇しなかったことが想定外」。
設備投資の状況などから、現在を1985年に喩えていました。
実は1987~8年という気がしてなりません。
何せ、今年動いた株は当時の活躍銘柄。
歴史はやはり繰り返しているのでしょう。
加えて「マーケットの自己増殖」。
拡大再生産は、工場だけのことではありません。

面白かったのは、外資系通信社の女性記者の質問。
「不動産は、まだ上がるのでしょうか?」
「来年も外人が日本株を買うのでしょうか?」
質問自体は理解できますが、これはファンドマネージャーに聞くことではありません。
こんな記者が書いた記事が配信され、外国人が読むのかと思うとゾッとした次第。
「もう少し勉強したら?」と言いたいところ。
もっとも、これは証券マスコミ全体の問題。
本当に知識と読みが稚拙。
映像や活字の宴に翻弄されない分、どう考えても現役証券マンに分があるようです。

もはや最終週となりました。
年内受け渡しは、今日で最後。
明日からは新年です。
つまり古の「初日営業」。
良いお年を・・・。

2005年12月19日

「賢者の贈り物」

師走ではなく「金走る」。
慌しくなってきました。
凛とした寒さは本当に久しぶりです。
温暖化はどこへ行ってしまったのでしょう。
調整ムードのマーケットは、寒さを一層感じさせるようです。

与党の税制大綱は、結論として景気対策型から転換し、実質増税2兆円。
定率減税が廃止され、大地震に備えた耐震工事に減免措置。
マクロな観点からは、公共事業費が4%あまり削減されていて、これは評価。
国家の観点からはとにかく出るを制すことが重要。
その意味では、多少の仕掛けとはいえ為替の115円台も理解できます。

意外と大きいのは、韓国のES細胞論文捏造問題。
ES細胞はバイオの柱であり、これは韓国に先行されると痛いところ。
京大を初めとして国内の各研究機関がしのぎを削っており、再びスタートラインとなったようです。
バイオはビジネス。
例えば、数年前、ある医大の女性研究者は心筋の再生技術を開発しました。
喉から手が出るほど研究費が欲しかった彼女は、この技術を食品メーカーA社に売却しました。
その金額わずか1000万円。
ところが、A社は数年後、バイオ部門を一括してB製薬に売却。
その売却価格には含まれたこの技術は数億の評価にもなっていました。
要するに、真摯な研究もヒューザーなどが跳梁跋扈するビジネスの世界では、カネの評価になってしまうということ。
でなければ捏造など起こりません。

マーケットも同様に心理戦。
ここ数日は粉雪相場。
「株屋殺すに刃物はいらぬ。株の3日も下げればよい」。
確かに・・・。
責任回避の「調整論」が目立ち始めました。

ブッシュ大統領が謝りました。
「イラクに大量兵器はありませんでした。
でもフセイン君が、言うことを聞かないので世界のみんなのためにいじめました」。
これでは世界の安全保障は子供の喧嘩レベル以下。
もっとも、ようやく真実が証明されたことになります。
かたやスノー財務長官は吼えました。
こちらは「僕は悪くない」。
アメリカの貿易赤字拡大について、ヨーロッパや日本の成長加速を求めました。
アメリカ人はこの発言で、「アメリカの責任はない」と思うのでしょう。
やんちゃなヤンキーの年末風景。
しかし、明らかに権力構造は変化してきたようです。
ネオコンの衰退。
そして、民主党の勢力拡大。
共和党は比較的トラッディショナルなので、あまり金融に興味を示しませんが、民主党は金融大好き。
クリントン政権の8年間に行われたことは、他国の市場潰しであったことは記憶に新しいところ。
これは困ったことになります。

日銀は家計の金融資産は過去最高の1453兆円になったと発表。
国債等が前年同月比40%増の24兆円あまり。
投資信託が同28%増の44兆円あまり。
どちらも過去最高を更新。
日銀の調査統計局は「米国や豪州などの公社債投資が目立つ」とコメント。
投資信託も対外証券投資が41%の伸びを示しました。
これだけ出してもまだ欲しいんですか?と聞いてみたいものです。

それにしても国務長官は米。
財務長官は雪。
雪と米ではそれこそ風情は餅つき。
だからボラの高い餅つき相場と指摘する専門家。
まもなく「戌笑う」だというのに・・・。

もうすぐクリスマスですが、実は筆者の誕生日。
プレゼントはソフトバンクかみずほなんて考えると楽しくなってきます。
ある役員氏は、奥様に500万円相当の株をプレゼントしたとの話。
それこそ「賢者の贈り物」。
「忙しい株式仲買人のロマンス」のような話です。

2005年12月12日

「こぶ」(いちば)

江戸を描かせては第一人者の山本一力氏に「端午の豆腐」という絶品があります。
雑穀問屋の丹後屋が発注を間違えて普段は50俵しか仕入れない大豆を500俵仕入れてしまいました。
その始末を、正月2日の初荷の日に「招福大豆」と称して富岡八幡宮で販売し、すべてを売り払います。
でも、あまりに儲かり過ぎたので5月12日を豆腐の日として、5万個の豆腐を振舞うことにする、という話です。
講談社文庫から出たばかりの「深川黄表紙掛け取帖」の中の一話。
ジェイコム問題の発生はあまりにタイミングが良すぎました。

東証の問題も発注ミス。
それも10倍どころか62万倍というケタ違いです。
「解け合い」という古典的な言葉まで持ち出されてきました。
株式市場がゲキタク商いを行い、「清算取引」といっていた頃の言葉です。
受け渡しが出来ないというのは、最近では商品先物でしか見かけなくなりましたが久々にお目にかかりました。
これも歴史への遭遇に他なりません。

ジェイコム事件発生の日の夕刻。
空気が透徹した黄昏の兜町で高名な元歩合外務員氏とお会いしました。
清水一行氏の「小説兜町」に出てくる山鹿悌司のような雰囲気。
落ち着いて冷静沈着なイメージでダンディでした。
「森下までに馬刺しを食べにいきましょう」とのお誘い。
池波正太郎氏の随筆に出てくる「株屋の吉野さん」の口調を髣髴とさせるイメージ。
綿々と続く東京株式市場の証人です。
ジェイコム事件に関して一言。
「愚かですね」。
そして「注文に愛情がないから、こんなことが起こるんです」。
重い言葉でした。

今の相場を「プリンちゃん相場」という人もいます。
競馬予想の「プリンちゃん」は、予想紙に手を置いて予想します。
それが結構当たるので、「ブロードキャスター」などに出演していました。
今はダートのように銘柄を選べば上昇。
だから「プリンちゃん相場」というそうです

ある伝説的現役トレーダーは明解に指摘しました。
「ストップ・ロスです」。
ジェイコムは品薄からのストップロス。
市場は、ネガマインドの裏返し。
この上げは15年間のお仕置きなのでしょうか。

週末、WOWWOWでの志の輔師の独演会を聞きました。
テーマは「こぶ取り爺さんの意図するところは何?」。
良く考えてみると、確かにこぶ取り爺さんに教訓はありません。
何のための話かわからないけれども、有名なんです。

こぶを取った鬼が、今度はこぶを返してくれる。
本当なら、返してもらえるのは嬉しいのだが、返してもらうと困るもの。
それが「こぶ」。
今、東京はこぶを取り返しに出発しました。
それも・・・海を渡って。
でも、 月に1兆円のお金を使ってこぶを取り返しに来る人もいるんです。
あちらこちらに「こぶ」が残されているようです。
もっとも上げ相場では「あばたもえくぼ」。
「こぶ」も大切なことに違いはありません。

ところで・・・。
評論家はしたり顔で言います。
「利食いも大事。大きな下げへの防衛も大事」と。
この言葉に何の根拠もないように見えます。
だったら株式評論などするなと言いたいところですが・・・。
過去の薄い常識が邪魔なんです。
そしてその常識を進化させないところが問題なんです。
だから「玉虫色」か「逃げ」がかならずちりばめられる。
それこそ「レッドカード」。
「来年3月配当取りまでは強い上昇局面」というような明確な発言が望まれます。

2005年12月05日

「シテ」(いちば)

ソニーが業績悪にもかかわらずじりじりと上昇。
普通なら絶対に食指は動かないにもかかわらず・・・。
オリックスは凄まじい上昇を続けました。
これらの背景は英語版のホームページにあると言う指摘があります。。
確かにヤマダ電機や沢井製薬のような超ドメ業種でも英語版のホームページがあるんです。

ニューヨークにもロンドンにも、日本株専門の担当者がいます。
流暢な日本語も扱えます。
彼らにとって英語版は別に必要ありません。
しかし・・・。
中東や東欧などのニューマネーにとっては、東京市場は地球の果て。
きちんと見える会社しか買いません。
とすると・・・。
キーワードは「英語版のホームページ」。
外人買いの簡単な見分け方となるのではないでしょうか。

サウジアラビアでは、銀行の融資規制が発動。
背景は「融資の多くが株式投資に向かっている」こと。
サウジの銀行の個人向け融資残高は6月末で4兆円。
その半分以上は株式に向かったといいます。

一方で東欧担当の日本株関係者は指摘します。
「彼らニューフェイスは知らない銘柄は買いません。しかも、一度買ったら継続します」と。

琴欧州が大関に昇進しました。
ブルガリアやアゼルバイジャンから東京市場にマネーが流れても不自然ではありません。
150タッチの月末ドレッシングは指数のマイナス5555。
そして週末の154は291円高。「福で行こうよ」となる。
本当に芸が細かい。

先週の新聞を1週間分ひっくり返してみました。
以下はトップの見出し。

11月24日「インド首相日本の民間投資期待」。
11月25日「冬のボーナス5.3%増」
11月26日「損保26社に改善命令」
11月27日「上場企業今期配当最高に」
11月28日「設備投資加速15%増」
11月29日「楽天・TBS和解へ最終調整」
11月30日「患者窓口負担69歳まで3割維持」
12月1日「高齢者負担2段階で上げ」
12月2日「日経平均1万5000円台回復」

例えばここから一つのストーリーが出来ます。
インドは日本からの投資に期待。・・・インド関連銘柄は上昇継続。
ボーナスは増加・・・個人消費は復調へ。
損保に改善命令・・・簡保民営化の本性は、まず損保に。
上場企業の配当は最高・・・日本企業は余裕あり、個人も儲かる
設備投資増加・・・景気回復基調鮮明
楽天問題・・・従来型企業の勝利
窓口負担・・・政府は小さくなる→外人歓迎
高齢者負担増・・・国家財政均衡へ

この流れからは「当然、株は上昇するに違いない」と読めてきます。

12月の「私の履歴書」は能楽師の片山氏。
期待感は少ないようですが、能だけに「仕手」株が乱舞?と見る向きもいるようです。