詩と真実・・・

マーケット三国志

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2005年08月24日

「詩と真実・・・マーケット三国志」(いちば)

「かたるさん」に憧れて5年。念願の弟子入りが叶い、週に1回修行させていただくことになりました。「詩と真実」なんて大きな題名と「マーケット三国志」なんて遠大なサブタイトルですが、肩の凝らない読み物にしたいと考えています。「いちば」は元株屋です。今は、専門紙の編集記者。毎日報道されるニュースを解読しながら、マーケットで起こっていることの「読み方」を求めていくつもりです。
 
「詩と真実」はゲーテの自叙伝。物欲の象徴のようなマーケットにも「詩」は必ずあると思います。単に利益だけを求めて株式投資をする人ばかりではないからです。もちろん、利益は一番大切なこと。でも、それだけではない筈です。

「マーケットは森羅万象を反映する」といわれます。市場至上主義とも言われますが、多くの人の心理の集合体であるマーケットには必ず「真実」があるに違いありません。そして、マネーの多国籍化。東京だけではマーケットは見えません。以前、南太平洋の国々を巡ったことがあります。驚いたのは、ODAの対象になるような国々でも、ブルームバーグが放送され、「NIKKEI」がオンタイムで取引出来ることでした。椰子の葉陰で寄付きを迎えるなんて想像できますか?

世界のマネーといっても、決してロンドンやニューヨークばかりではないのです。特に香港・シンガポールなどとの連関性は忘れてはいけません。そして、商品、不動産、絵画など。マネーの世界に境界はありません。そんなことを織り込んでいきたいと考えています。

証券界には疑心暗鬼の人がとても多くなりました。株が上がってくると、「そんな筈はない」と考えてしまうのでしょう。「株は上がらないもの」という常識は、ここ10年あまりのことですが、証券マンでも平成以降入社の人間にはこれが常識となっているようです。95年頃、都内の支店に営業課長として赴任したとき、部下が言いました。

「課長、どうして株を売らなきゃいけないんですか。お客様が損します。」

入社以来儲けたことがないのであれば当然の答えです。でも、そのとき注目したのは800円台の松下と12000円台のソフトバンク。変化できない経験則と先が見えないということは不幸です。このとき買ってもらった銘柄がどれだけ貢献してくれてことか・・・。まだまだ東証売買代金が2000億円という必死の時代でした。

さて8月のマーケットですが、TOPIXの上昇率が世界の株価指数のベスト10に入りました。アブダビやシンセン、プラハ、サウジと肩を並べるようになったのです。ニューヨークよりも上なのです。ようやく東京市場も世界の仲間入り。このことを信じられないのは日本の投資家という「灯台もと暗し」の不思議な構図です。

ゲーテのファウストの締めくくりは「もっと光を!」。

東京市場に必要なのは、この光と自信。三菱地所がロックフェラーセンターを買って虎の尾を踏んでからの十数年は、もはや過去のこと。ようやくの復権です。ソブリン・アセット・マネジメント(投資ファンド)は、韓国LGグループの株式7%とLG電子の株式7.2%を売却しました。合計約50億円の売却損。7月にエネルギー大手のSK株を売却した際の800億円近い売却益との合わせ切りとなのでしょう。
さすがにやることがダイナミック。このマネーの行き先は?

東京株式市場という可能性は高いと思います。指数を3万円下げたマネーは、今度は逆作用に働くと考えたいところです。スポットライトは、東京に当てられたに違いありません。

最後に、この国の歴史もよく考えてみる必要があります(話題の戦争とアジアの問題ではありません)。明治維新以来の歴史です。特に見ておきたいのは、長崎のグラバー邸。坂本竜馬など志士たちを相手にジャーディン・マセソン商会のグラバー氏は「この国は君たちがつくりなさい」と語っています。一方で、徳川慶喜家にはフランスのソシエテジェネラル銀行が莫大な融資を申し入れています。この延長戦上に今の東京市場があると考えなければならないのではないでしょうか。