今日の市況(2012年07月10日)
かたる:市場原理とは政策を市場に問う考え方で、中央銀行が利下げをしました。「市場さん、この政策はどうですか?」と問いかけています。そうすると、市場は、「いや、まだまだ充分でありませんよ。」とスペイン国債の金利が7%台に乗せるのですね。本来なら、決め事ですから、EUの公的機関がスペイン国債を買わなくてはなりません。強烈に買いが続けば、「こりゃ、本物かな?」…と市場は政策に敬意を表しますが7%を大きく超えて売られるようでは、政策の足元を見られており、「こりゃ、まやかしだな。」…と言うことになります。
つまりこの繰り返しによって政策が決定されていきます。ところが中には政策当局者が「俺は常に正しいんだ。土地や株が下がっても景気に影響なんかしない。」と述べた元日銀総裁三重野さんのような人物が出てきます。当然、株価は悲鳴を上げ、強烈に下がりますが、前言の通り、「株なんか経済に関係ない」と突っぱねるわけです。こうして1989年からの崩落が始まる訳です。それまでは、前任者の澄田さんは、「あらら円高だ、こりゃ大変だ。金融緩和だ、金利を下げろ」と周りの状況を見ずに、始めた銀行貸し出しの急増が日本の地価を大きく押し上げたのですね。金利平価説により為替相場は決まると言うバカ信者ですよ。当時は土地神話が横行し、地価は下がらないと信じられていました。
この辺の駆け引き、「市場との対話」と言われますが、上手かったのがグリースパンでした。しかし彼も金融デリバティブの弊害を見破ることが出来ずに、金融危機を導き出しました。儲かれば浮かれるのが人間です。損をすれば反省をし自粛します。
今の市場は面白いですね。昨年の暮れから世界の中央銀行が結束して景気浮揚に立ち向かっています。世界経済のリーディング・カンパニーの米国は中央銀行のベースマネーを2倍から3倍に引き上げています。いくら新興国の市場参加で経済がグローバル化しても3倍ですからね。昨年末はECBが銀行を通じて資金供給ですね。FRBと違うのは銀行を通じて緩和をしている点です。日本もFRBほど急速にやっていませんが、FRBよりずっと前から緩和状態を続けています。ここに来て中国も2度の緩和政策を実施しています。
私はここがミソだと考えています。BRICsを代表する中国が金融デリバティブの発展によりCDSが開発され、本来、融資を受けられないのに、資金が回ったのですね。そのおかげでこれまでの市場経済は先進国が主要だったのに…新興国が市場化されたのです。この金融デリバティブの流動性の欠如が金融危機ですね。だから当然、新興国の経済成長も鈍る筈です。ようやく、金融規制の効果が市場に現れており、先走った金融デリバティブがFRBなどの流動性の供給により仮需が本当の実需に変化している構造なのでしょう。
日本のケースを考えてください。地価は収益還元法価格、株価は配当利回りの世界ですよ。誰が考えても澄田総裁が口火を切ったバブルは終焉しています。それにもかかわらず資産価格は下げ続け、資産デフレが進行し、とうとう、日銀が自らリートやETFを買っているのです。実需を通り越している状態ですね。流動性の罠、いくら金利を下げても需要は起こらない不人気の塊状態です。市場主義の国、米国はまだ流動性の罠の入り口でしょう。故にGSEさえ、整理がつけば変わる期待があります。
私は昨年の欧州危機からのECBのマリオちゃんが思い切った緩和策の発動で勝負はあったと考え始めています。スペイン国債は7%、それならば、本当はECB自ら買えば良いのですね。ここで財政規律の問題が浮上します。ドイツは嘗てリヤカー一杯に積んだ紙幣でパンを買いに行った苦い経験があります。ジンバブエの世界ですね。パンを買うためにお金をリヤカーに積みこむような非現実な現実が起こります。故にやかましく財政規律を問う訳です。
世界の構図を見れば、列強国が軒並み緩和策を実施しており、時間の問題で資産価格は上がり始めるのでしょう。そうなると…全ての問題が片付き始めます。経済が好転し始めますね。もう直ぐですね。間もなく列車は出発するのでしょう。「流動性の罠さん、さようなら…。黙ってシコシコと収益還元法価格になった土地を買い、配当利回りまで落ちた株を買うのですね。だって信用力の高い国債なら1%で買う人がいくらでもいるのです。その国債をジャンジャン発行してみずほを買えば、1年で3倍ですね。今は信用力のある人が少ないから、流れはなかなか変わりませんが、需給バランスは既に転換している可能性が高いですね。だって欧米の銀行はドンドン格下げされ、相対比較で邦銀の格付けは高くなっています。誰が考えても…日本の銀行株は上がるのでしょう。馬鹿な日経新聞さんは、金利が下がったから利ザヤが少なくなり利益が減ると言っていますが…間もなくターニングポイントですね。
冒頭掲げた市場と政策の駆け引きは9月までと予想していますが、場合によれば、時期は早まるかもしれません。

投稿者 kataru : 2012年07月10日 10:01