企業理念(2014年01月04日)
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。昨年末の大納会に安倍首相が列席され、彼へのカタルの評価は高くなっています。靖国参拝の見方は難しいですね。近隣諸国との関係を考えての行動で、オバマのシリア情勢やイランへの対応を考えると、時代はグローバル化に向け、一層、早く進んでいる様で、本来、戦争を知らない僕らの世代が、過去の歴史認識に縛られ、反省を未来永劫まで強いられるのかどうか…。過去の日本の経済援助の規模を考えると、日本はドイツのように、明確的に償いはしてこなかったけれど…、一旦けじめを付けているとの認識です。古典的な手法のナショナリズムを煽る中国、韓国のやり方が正しいのかどうか…。この事は安倍さんにも言えるかもしれません。安倍さんの行動評価はさておき、普通の日本人の感覚なら無用な摩擦を避け、参拝はしない筈ですが、敢えて参拝をしている彼の精神力の強さを、カタルは大きく評価しています。現状の日本において、失われた時代からの脱出は、数々の難関が内部に潜んでおり、あの行動力は、その壁を打ち破るんじゃないか…との期待感を抱かせるものです。そうして大納会の参加ですからね。やはり今年の相場に対する期待は、自然に膨らむわけです。
今年はいくつかのテーマが課題になりそうなので、その背景を探る試みを始めました。先ずは輸出企業に及ぼす「為替の影響」が、カギを握る材料になりそうなので「貿易収支」を調べてみました。一般常識としては産業競争力が高ければ、貿易収支は黒字になり、更に円高になる筈ですね。為替の決定要因は様々ありますが、もう一つの大きなウェイトを占めるのが「金利平価説」でしょう。お金は金利の低いところから、金利の高いところに資金は向かいますからね。後者は金融政策に大きく影響されます。現状は米国金利が日本より高く、FRBは既に金融緩和縮小を決めましたから、米国金利は上昇圧力が掛かり、日本は日銀の大量の国債買い入れにより、金融機関の資金がジャブジャブ状態で行き場を失っているから、日銀当座預金に100兆円もの資金が積み上がる訳です。故に金融環境は円安の流れです。分かりやすい事例は、日本の金融機関が日本国債を売り、米国債を買うなどの事例が増えると思われます。通常はこのような裁定取引が増えるはずですからね。しかし今日は、金融面より貿易面を見てみます。何故なら日本の生産力が落ちている可能性が高いからです。
日本は長い間、資源を輸入しその原材料を加工し、付加価値を付けて製品化して輸出をしてきました。その鞘(付加価値)を抜いて、国力(GDP)を付けてきました。1ドル=365円からプラザ合意を経て1ドル=100円割れを演じてきたわけです。米国とソ連の両大国の対立による東西冷戦下の環境の中で、米国の庇護のもとで日本は成長を遂げてきました。日米同盟の形は、仮想敵国ロシアより、現在は、中国への抑止力と言う方向性に変わり、第一次列島線、第二次列島線などの意味合いの重要度が増しています。同時に米国と中国の経済的に繋がりは日本より強くなり、GMを始め、米国の多くの企業が、中国経済の影響を受けています。この動きはITバブル前後の2000年辺りを境に、金融デリバティブの発展が、劣等国のBIRCsに信用を供与する形で、世界的な発展を遂げたことが影響を与えているのでしょう。下のグラフを見て下さい。明らかに2000年以降、グローバル化の加速が見て取れます。

しかし現状の日本経済は1985年のプラザ合意、そうして2000年のITバブルの変化を、日本の中央集権体制は上手くキャッチアップ出来ずに後手を踏んでいる印象です。特に国家、政府のあり方を巡り、2000年初頭の金融システムへの過度の強制力の発動(UFJの消滅)が、民間企業の自由度を奪ったとの印象を、強くかたるは抱いています。(ただ視点を変えれば、グローバル化への対応の一環かも知れません。)カタルは基本的に、米国共和党の考え方である「小さな政府」と言う基本概念を持っていますから、日本政府のあり方に強く疑問を抱いている訳です。基本的に国家体制はプラットホームづくりに留まり、自由な活動を制約すべきではないと言う考え方です。古びた社会資本設備を最新のものに入れ替え、方法論や手段は、民間企業の自由度に任せるべきだと言う規制緩和支持派です。江戸時代は地方の食えない百姓が、江戸をめざし長屋生活を営みました。この中央集権体制を、更に強化したのが明治政府です。明治以降、日本は基本的に中央集権体制をめざし国力を中央に集め富国強兵路線を歩んできたわけです。今は東京の落ちこぼれが、地方に活路を求める時代かもしれませんね。中央集中から地方への分散かな…。この基本概念が正しいのかどうか…。今の時代、インターネットの発展は価値観を大きく変えているようにも感じます。
豊かさとは何か?
最近では「長いデフレ環境」のせいか、物質的な豊かさを満足させるお金を集めるゲームから、自分の存在感を確かめる社会貢献度に主眼を置く、社会起業家が増えてきましたね。SFの世界では物質的な豊かさから、価値観が大きく変わる姿がよく描かれています。心の満足度とは、どこから来るか?と言う問いですね。日本は長いデフレ環境の中で、価値観の転換が、起こっているのかも知れません。株屋がこのようなテーマを考えるのはおかしいのですが…。株価を考えていくと、「利益の継続性」から「利益の質」を考えるわけです。そうすると付加価値とは、何か?…を考えるわけですね。人類史上で最も付加価値が高いものは何か? 現代社会では、お金でその価値観を表現している訳ですが…、人々を感動させる、心を揺さぶる時間…と言うものに、究極の付加価値のエキスは集約されるように感じています。その「感動」は、人により感じ方が様々です。小説であったり、音楽であったり、絵画であったり、性の快楽、恋愛からの家庭生活に安住を求める人も居るでしょう。食に感動を覚える人も居るでしょう。要するに生きている時間を、どんなに充実させるか…。なかにはお金の量で、喜びを感じる人も居るでしょう。しかし普段生活する分には、そんなにお金は必要なく、むしろ生きる時間を、どう過ごすか…その時間空間に満足度を求めるのが、正しい追及の姿かな?とも考えるわけです。
まぁ、株屋の概念から外れ、皆さんの希望通りに…話がなかなか向きませんが、豊かな時間を長く過ごしたいと願う訳です。お金など…は役に立たないことも、現実社会では良く起りえるのです。病気や痴呆など考えると、豊かな時間は、決してお金では買えませんからね。お金持ちでも家庭環境が悪く、精神的に豊かな時間が過ごせない人は大勢います。ブータンの幸福度と言う概念ですね。「3丁目の夕日」への憧れは、昭和30年代の希望の溢れる生活感なのでしょう。閉塞感に包まれた現代は、物質的には非常に豊かですが、心は、あの当時より貧困になっているようにも感じるわけです。現代社会における「生きる糧」とは…「理念」でしょうかね。共通する理念をもつ集団が企業なのかもしれません。
先日、友達と話していたら、娘さんが留学から帰ってきて、誰もが羨む「サイバーエージェント」に就職したのですが、僅か2年か3年で、社風に合わずに転職したと言うのです。僕も会社の実態は分かりませんが、一般的な話を総合する限りでは、サーバーエージェントは、なかなか社員更生も充実しており、良い会社だとの…評判だったのです。しかしきっと彼女は、トップとの理念を共有できなかったのでしょう。強い成長集団は、利益以外に追い求める「理念」がないと、なかなか大きく伸びませんからね。その事をよく理解している企業がソフトバンクですね。孫さんは、良く、この「理念」の話をします。何を目指すか? 僕らは力をつけ、何を社会に提供出来るのか? こればかりは一株利益を見ているだけでは、なかなか社風は、理解できませんね。株主となって、応援しようとする心は経営者と株主が、「理念」を共有できるかどうかに掛かっているのでしょう。
さて前文が長くなりました。
本当に世間が認識している一般常識が正しいのかどうか…。自分でデータを調べてみると色んな疑問が浮かぶわけです。最近の貿易赤字は大震災の影響から、輸入資源の代金が膨らみ赤字が増えていると言うのが一般的な認識でしょうが…実際に調べてみると、確かにLNGなどの購入代金は膨らんでいますが、それを含む鉱物性燃料全体の輸入代金は、先ほどのグラフのように増えてはいますが、突出して増えている訳ではありません。むしろITバブル以降、BRICsの発展する過程で、日本の競争力が劣化しているのではないか?…との疑問が、このグラフを観察していると浮かぶわけです。
日本が円高に悲鳴を上げ、政府に対策を求めたのは2009年頃からの話で、為替が90円台に突入した時です。この時期に日産は大衆車マーチのタイへの生産移管を決めています。しかし同時に、日銀は社会からの批判に反論する形で、よく実質実効為替レートの話を持ち出していました。日銀の主張のように…この時期の実効為替レートは是正されています。米国発の金融危機を切っ掛けにして、一気に日本はグローバル化を加速させ、長い間存在していた二重価格制度の内外価格差が解消したのが、この時期じゃないか…と、カタルは推察しています。日本は長い時間をかけ株式持ち合いなどを含め、構造改革を完了したのが、2010年と言う時期ではないかと思われます。カタル自身、実効為替レートの仕組みを理解しているのかどうか…怪しいのですが、この時期に名目と実質の価格が逆転していますね。実効為替レートとは、59か国の通貨と二国間為替レートを、3年ごとの貿易額をベースにウェイトを算出し、計算されているものらしいのです。消費者物価なども加味されているようです。BISが提唱したものですね。相対的な為替動向を判断する指数として一般化しており、現在は2010年基準です。

グラフは実効為替レートの名目と実質であり、その差は、カタルが思うには日本のガラパゴス化が引き起こした二重価格制度の「内外価格差」の実態を表しているように感じています。貿易や多くの通貨を参考に変動する指標だからですね。この認識が正しいかどうか、分かりませんが、ユニクロやニトリの株価、日産のマーチの移転などの時期を考えると、変化が一致しているように感じています。故に、グローバル展開が重要になり、ソフトバンクがスプリントの買収に動き、グローエの買収を決めたLIXILなども、このような環境が影響しているものと思われます。あくまでもカタル独自の仮説ですからね。誤解のないように…。

更に此方のグラフを見てもらうと…分かりますが、米国金融危機後、EUとの貿易も赤字化に拍車が掛かっています。中国だけでなく…おそらく日本の生産基地が中国を中心にアジア地域に移転したためでしょうが…。日本国内の産業競争力が総体的に落ちているのでしょう。EU向けの推移は、いったい何を物語るのでしょう。単に欧州危機に起因した通貨問題だけなのかどうか…。仮に…この動きが是正されるとすれば、欧州向け輸出企業に恩恵が傾き、欧州向け輸出比率の高いとされるキャノン、オリンパスにニコンのような精密企業が、株価上昇のバイアスが掛かる可能性が増大しているとの連想も働きます。コイルのスミダもそうですね。ただこの仮説が正しいのかどうか…。この辺りは「日本板硝子」を参照銘柄に掲げた発想にも似ています。この板ガラスですが、大納会では日経225の中での注目度は一番でした。米国経済や中国の回復も当然ですが、意外にEU関連が、今年は穴場かもしれません。
今日は少し難しい課題にチャレンジましたが…、「理念」が企業価値に大きな影響を及ぼすと言う考え方は、正しい見方ではないかと考えております。株価の評価の中には、企業業績は勿論ですが、時代性を加味した「企業理念」の重要性を理解されると良いのではないでしょうか? 明日は、変化率と言う観点から、銘柄の選別を念頭にレポートを作成させるつもりです。やはり年初らしく…、少し変わった視点のレポートに挑戦しています。