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実質金利はマイナスへ(2013年11月02日)
この原稿は金曜日に書かれています。尚、3連休は出かける為に、日曜日のコラムはお休み、月曜日は早めに帰宅すれば書くかもしれませんが、お約束は出来ません。ご了承ください。
昨年の印象が強い為か…。例年、気にされる11月の決算対策のアノマリーを忘れていたような気がします。12月は外人ファンドが決算を迎え、決算対策が行われます。どうしても11月半ばまで弱含みに推移するのは致し方ないのかもしれません。ポジション調整です。先週、一部のヘッジファンドが「アベノミクスの失望論」を展開しましたが、多くの賛同は得られずに、この見方は、一旦、後退したのかもしれません。ただ春先の期待感は長期金利動向などにみられるように大きく後退していますし、為替も最近では100円を超えることは難しくなっているようです。カタルはどちらかと言えば円高論者ですから…為替水準はあまり問題にしませんが、長期金利の動きは、いくら日銀の買い入れ規模が大きいとはいえ…やはり気になります。

このグラフは、銀行貸出残の推移と前年比率の動きを示したものです。
通常、経済活動が活発になれば、売り上げが伸び、利益が膨らみます。つまり全体のパイが大きく膨らんでいくのが正しい成長の過程です。付加価値の合計であるGDPも増え、今、さかんに問題になっている賃金も増えるのですね。だから資産と共に、借り入れも増えます。全体のパイが増えるのが正しい経済成長です。経済が加速すれば、するほど、借り入れは増えることになります。借り入れコスト(長期金利の利回りは0.6%+0.3%程度)からインフレ率〈消費者物価の達成目標2%〉をひいた実質金利が、マイナス圏に現状はなる筈で通常は投資活動が盛んになり、経済全体のパイを後押しします。日経新聞、火曜日朝刊17面の「一目均衡表」の意味は、その事を言っています。カタルが信用創造(ケネディクス)の重要性を何度も説いているのは、そのためです。
日本は長い間、日本村社会の構造改革を実施してきました。
その為に日本独自価格が崩壊し、内外価格差の是正が行われ、企業は海外生産を増やし、国内生産を実施する企業は減り、空洞化しました。ユニクロが世間に登場した当時を思い出してください。驚く価格設定だったのです。日本の衣料品価格に日本村社会価格が通用していたからユニクロ・プライスに驚いたのです。プラザ合意以降、日本村を支えていた終身雇用や年功序列という、日本村論理が市場原理にさらされたのです。これが「失われた時代」の構造調整です。
他にも色んな事があるのですよ。株式持ち合いなども、その論理の一環の仕組みです。東西冷戦の終焉は、米国の保護がなくなり、プラザ合意と言う円高を切っ掛けに、日本にグローバル化を突き付けたのです。ようやくTPPまで来ました。コメなどの関税を撤廃すれば、日本はようやくグローバルな土俵に立ったと言えるのでしょう。未だにむかしの日本を懐かしむ声が多く聞かれますが…グローバル化は情報の共有に始まり、避けられない壁なのです。国際会計法など…みんな一元化の流れにあります。金融機関の自己資本比率規制も、その流れですね。この構造改革が終了したのが1998年から2003年の年でしょう。折角、浮上したのに…既得権力者の逆襲や米国の金融危機などがあり、再び日本は沈み、アベノミクスで再浮上しているのが、今の時間の流れです。ざっとこれまでを振り返りました。
さてここに来て、一部のヘッジファンドが主張する「アベノミクスの失望」は良く分かります。みずほ銀行の反社会勢力への融資問題が、総額で2億円程度なのに…大きな社会問題のように報道される実態は、どう考えても失われた時代の清貧思想の流れにあります。折角、黒田さんの異次元緩和で、ここまでお膳立てして来たのに…揺り戻しの動きにも見えますね。法人税改革などは時代の流れです。逆らっても地球上で生きているならルールに従わざる得ないのです。サムソンが代表するように、国際競争に勝利できるかどうか…なのですね。パナソニックが買収した三洋電機の白物家電を、中国のハイアールが買収する流れは、日本が構築した仕組みの陳腐化を証明しています。TSMCの躍進に追随できなかったNECなど…事例を掲げれば限りがありません。日本村論理の基礎社会資本整備自体が陳腐化しているのですね。震災後の原発処理を観ても分かります。電力料金は上がり、企業の生産活動の選択肢は、日本という地理的な選択をしたくても難しくなっています。金融庁は厳格な減損会計を迫り、銀行独自の許容度を奪っているのです。不良債権問題を巡る金融庁との意見対立からUFJは争いに負け、消滅させられた事実は、心理的な悲劇ですね。
その現象が先ほど見て頂いた銀行貸し出しに現れているのです。
ようやく前年度比で顔を出した2006年2月には早くもライブドア事件が起こりますね。折角浮上したのに…、再びベースマネーを大きく絞る日銀など、日本の中枢機構は明らかに狂っています。その結果が自殺者の増産と、ブラック企業の誕生ですね。若者の実に25%近くが、自分の会社はブラック企業だと感じているのだそうです。サービス残業などは良い方でしょう。ギリギリの政権交代が、民主党政権の誕生に繋がったのですが…本来の役目を忘れ、内部崩壊し、再び自民党政権の誕生でアベノミクスが実行されていますがヘッジファンドの杞憂かどうか…。日経平均株価が長い間、三角保ち合いを演じている理由を、政策の中枢を担う人たちは理解しているのかどうか…。ここに来て「アベノミクスの失望」が生まれる根拠は、みずほのやくざ融資問題にも象徴されているように感じるのは、果たしてカタルの考え過ぎかどうか…。
ただニトリの米国進出、ソフトバンクのスプリント買収、最近ではドンドン企業がグローバル化戦略を打ち出しています。ピジョンは代表的な成功事例ですね。こんな中で、日産自動車が通期企業業績を減額修正しました。この理由は新興国、ブラジル、インド、ロシアの新モデルに関する、一時的な現象と説明されているようですが、早くにグローバル戦略を打ち出していた日産だけに、時代の流れの象徴でもあります。おそらくタイなどへの生産移転が完了していたために、他社程の為替メリットを受けられずに、FRBの金融政策変更の影響を受けたのでしょう。本来なら伸び続ける中国が補うのでしょうが、日中間の問題が響いています。日産は他社に先駆けグローバル展開をしています。自動車セクターの株式をお持ちの方は注意を要する内容です。
さて、このような現象を見ると、今こそ、日本の信用創造をはじめとする政策の重要性が、分かると言うものです。日産自動車の決算内容をもう少し吟味する必要性を感じますが、既に日付が変わり疲れて来たし…又にしましょう。やはりアベノミクスの成功には信用創造企業の復活が欠かせませんね。市場がこの重要性に気付くのは何時なのでしょう。決算発表が行われ大きな驚きはないでしょう。株式相場は来年をにらんだ動きを続けます。年末年始は1年を通じ、一番、期待感が溢れるはずですが…今年の条件はいくつかの懸念材料が越年します。迷走するFRB、あのバーナンキの市場への警告は何を意味したのでしょう。米国の財政問題からの一連の展開は、情報収集活動を含め、米国の力の低下を示していますね。オバマ政権は難しい時期を上手く乗り切りましたが、米国の信頼性を裏切ったのは大きな汚点でしょう。日本ではやはりなかなか引火しない設備投資と消費税引き上げでしょう。
ただ日本は復興需要から社会資本設備の更新需要、オリンピックなど…待ったなしの需要を多く抱えており、上手くスマート・シティーへの転換できるかどうか、本来なら準天頂衛星のみちびきの4機体制の実現を、前倒しで実施しなくてはなりません。このような新しい社会資本整備を早めに実施して、ベンチャー企業が誕生する社会環境を整える必要性があります。それを…いくつかの選択ミスが余り重なると、失われた時代を延長させることになりますね。今は非常に大切な時期なのです。それでは時間です。また来週。