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CSR(2008年06月28日)
「コンプライアンス」(法令遵守)と言う言葉が社会に定着するようになってから、どのくらいの時間が経過したのでしょう。最初は何のことかな? と思ったことが印象に残っています。偽装事件が多発し、製紙業界や製鉄業界でも同じような問題が起こっていますが、食品業界への世間の風当たりは強いようです。何故かな?と考えることはあります。偽装にも色んなタイプがあり、赤福の事件の時のように賞味期限が問題とされる事件がありました。23日の読売新聞の「飽食のコスト」4は衝撃的でした。日本の缶詰の賞味期限は3年が一般的なのだそうですが、保存状態がよければ半永久的にもつのだそうです。さらに、ロングライフ牛乳に至っては、日本では賞味期限が60日だそうですが、アメリカでは6倍の12ヶ月、ドイツ、フランスでは90日だそうです。生卵が日本では2週間ですが、アメリカでは3週間だそうでニュージランドでは35日間だとか…夏場で17日間、冬場で61日は常温でも食べられると報道されていました。
最近、同じような横文字でCSR(Corporate Social Responsibility)と言う言葉が話題になっています。一般的に企業の社会的責任と言う意味で用いられているようです。企業活動する上で儲けることが一番大切なのですが、同時に経済活動の意義を問われます。株主に対し企業活動の説明責任が問われるのですね。株主総会が盛んになっており、経営者が株主に対し、赤字の原因や事業の存続の意味を説明できないとなりません。特にヨーロッパではこのような考え方は非常に厳しく問われます。先日、NHKのテレビを見ていたら、アフリカでマラリヤ予防の為の蚊帳を作っている会社があることを始めて知りました。しかもその蚊帳は日本の技術が使われている殺虫効果のあるネットを使用した蚊帳(オリセットネット)なのです。蚊帳(オリセットネット)に蚊がとまると、蚊が死んでしまうのです。すごい技術でその効果は5年ほど保つのです。アフリカのタンザニアの工業でアフリカ人が雇用され、その蚊帳をアフリカの人が買いやすい価格(500円)で提供する事業です。関心を持ちました。そうして調べてみました。その会社は日本の大手化学メーカーの住友化学なのです。視聴は此方から…(ヤフーは宣伝がありますが見やすい。しかし「goo」の方が宣伝はなく疲れません。)
住友化学は売上高1兆8965億円の会社で営業利益は1024億円、純利益は631億円の会社で1株利益が38円の会社です。配当は12円。石油化学が主体で6033億円、基礎科学が3147億円、精密電子化学が2975億円、医薬品が2376億円、農業化学が2004億円、精密化学が926億円、その他が1501億円あります。
石油化学のコメントです。
…合成樹脂の販売は、アジア市況の上昇や国内での原料価格高騰を反映した販売価格の是正により増加しました。また石油化学品についても市況が上昇し販売が増加しました。この結果、売上高は前期に比べ643億円増加し6033億円となりましたが、営業利益については、販売価格は上昇したものの原料価格の高騰により採算が悪化したことに加え、国内の製造設備における4年に一度の大型定期修繕の影響等により前期に比べ191億円減少し45億円となりました。
この部門別のコメントに対し分かることは、原油価格の高騰が製品転嫁できずに減益要因になるということですね。鉄鋼会社と同じく原料高が減益要因になるのです。さらにアジア地区の好調は持続し、工場の修繕と言う一過性の利益減少があったということが理解できます。
二番目の基礎化学では…
カプロラクタムやアクリロニトリルなどの合繊原料やメタアクリル等の販売は、堅調な需要と原料価格の高騰を背景とした市況の上昇により増加しました。一方、アルミニウムについては、一部のリセール販売を中止したことにより販売が減少しました。この結果、売上高は前期に比べほぼ横這いの3147億円となりましたが、営業利益は原料価格の高騰や固定費の増加の影響により、前期に比べ29億円減少し106億円となりました。
知らない言葉が出てきました。カプロラクタムって何かな? ネットは便利です。調べるとナイロン6の原料でベンゼンからつくるのだそうです。このベンゼンは石油から作られています。ナイロンの使用用途は…女性のストッキング、自動車部品で使うナイロン樹脂などがあり、毛布や蚊帳、ナイロンロープ、魚網、楽器の弦やテニスラケットのガットなどに使用されます。アメリカのデュポン社が発明しました。
国内には宇部興産(55千トン、タイ25千トン、スペイン10千トン→16千トン)の能力を持ち、東レ(東海工業10千トン)、三菱化学は(黒崎30千トン、台湾に11千トン)三菱ガス化学(米国に10千トン)住友化学は(愛媛にBASF技術で93千トン、新工法で67千トン)住友化学と宇部興産は大手ですね。世界の需要は2003年、385万トンでアジアは40%か…
調べていくと時間が掛かりますね。ここで断念します。
まぁ兎も角、企業を調べる場合は先ず内容を調べます。そうして競合相手を調べ、各社の競争力を比較し、競争に勝って利益を計上できるか調べるのです。当然、良い面もあれば悪い面もあります。例えばベンゼンは有害物質になっていますね。アクリロニトリルと言う製品は発がん性があるそうです。しかし熱可塑性樹脂としてライター・ボールペン・エアコンのファン・扇風機の羽根、積算電力計カバー、バッテリーケース、万年筆やボールペンの軸等に利用され重宝しています。企業の営業を考えて調べる場合は一面性ばかり見ては駄目でいろいろな観点から見る必要があります。
長くなりましたが、CSRと言う概念が企業になくては社会と共存は出来ません。ただ儲ければ良いと言うのは、長続きがしないからです。株価を決めるのは利益水準も大切ですが、事業の継続性と採算性が問われ何より独自性が求められます。
ハンバーガーのマクドナルドには「 ドナルド・マクドナルド・ハウス」と言う事業があります。僕を歩合外務員に導いてくれたO証券のKさんがお世話になった藤田 田さんの会社です。彼は株が好きだったのです。一見、みなさんは知らないのでしょうが、毎年11月になると全国のマックでは募金活動をやります。皆さんがマックでハッピーセット一つ注文すると1円が「ドナルド・マクドナルド・ハウス」に寄付されます。2007年はなんと1億個も販売したとか…。この「ドナルド・マクドナルド・ハウス」と言う施設は病気になった子どもの看病の為に、地方から上京する親御さんに宿発施設を提供するボランティア活動をしています。
ビルゲイツは引退するそうですね。彼はまだ52歳かな?これから基金の活動に専念するとか…社会起業家と言う言葉がありますが、お金を求める市場主義経済のなかでもCSRと言う論理は生き続け、継続的な活動を目指し社会に貢献しているのですね。住友化学はタンザニアで、アフリカ人の手によって蚊帳を生産し、その事業活動を支援しているのです。株式投資をするということは儲ける事が一番大切でしょうが、その前に意欲の高い会社を育てる意味があることを、僕等は忘れているのではないでしょうか?