楽天の争点(2008年04月19日)
本日の争点はネット株の楽天を取り上げます。新興企業はソフトバンク、光通信の二大勢力からヤフー、楽天が生まれたイメージが強く残っていますが、既にソフトバンクは資金力の関係もあるのでしょうが、ネットグループと言うイメージではありませんね。光通信もネットバブル時代に叩かれ重田さんは普通の会社を目指しました。ヤフーだけがネットに経営資源を集中し、楽天はネットを通じて一般生活に輪を広げた印象をもっています。
今日は楽天の株価の争点を考えて見ます。楽天はご存知のようにネットで仮想店舗を構築した物品販売会社ですが、アマゾンとは少し違います。直販をしていませんからね。しかし仕組みは似ています。三木谷さんは証券会社を買収し、クレジット会社を買収し、ネットとテレビの融合と言う事でTBSの買収(合併)を企てましたが此処で躓きました。現在の楽天の売上げ構成を見るとECが768億円、KCが710億円、証券が305億円、トラベルが133億円、球団が82億円となっています。今度、東電より買収したフュージョンの通信部門97億円(8月から4ヶ月ぐらいの売上げ参入)が加わります。クレジット部門は利息返還請求の一括積み立てのより黒字化します。事業として立ち上がります。今度はフュージョンの再建が問われますが、クレジットと同様に早期の黒字化の見込みがあるのでしょう。あとは棚上げになっているTBSの処理の仕方が焦点になりますね。楽天の問題点を悲観的に見るなら、この2点が懸念材料として残ります。
既に新しいステージへ向けての意欲を感じるのが、台湾への進出とベルギーへの進出ですね。おそらく台湾は中国市場へのステップで、ベルギーはEUへの広がりを睨んでの動きなのでしょう。楽天の一株利益を概算で2000円と見ると株価はおおよそ6万円ですからPERは30倍の評価です。ヤフーの株価は1200円の一株利益として株価が55千円ですからPERは45倍の評価です。アメリカヤフーは買収話効果もありPER60倍で、グーグルは40倍、アマゾンは70倍などの評価になっています。概ねネット企業の収益は売上げの伸びが利益に繋がりやすいのでPER50倍程度の評価をする可能性があるのですね。
問題は楽天の争点です。現在のPER30倍の評価は一般企業のレベルからすれば高評価ですがネット企業と見れば評価不足になります。仮にネット企業としてみると、既に国内の収益基盤である事業の足元を固め世界戦略を睨み始めたとしたら…PER50倍の評価を与えても良いのではないかという見方が市場で生まれる可能性があります。私はここに相場の焦点があると思っているのです。弱気派に言わせれば、TBSも片付かないのに、フュージョンを抱え、新しい事業展開の台湾やベルギーまで手を広げる必要があるのか?と守りの見方をしますが、強気派に言わせればようやく国内基盤が固まり世界戦略が見えてきたとも見えますね。
一方、テクニカル分析では長い株価低迷から新しいステージに向かっているようにも見えますね。業績面の争点がありテクニカルの面で追い風の株価がどう動くか?まぁ、新興株応援派の私が極めて冷静に見ようと両者の意見を載せた訳ですが、果たして市場はどんな判断を下すのか?此処に相場の争点があり、売り方と買い方のせめぎ合いが存在するのでしょう。

前回は三菱商事の争点を簡単に書きました。今回は楽天を取り上げました。単なる需給だけで動く株を私達は追いがちですが、そんなものは社会の貢献にも自分の利益にもならないでしょう。いい会社にしようと言う気持ちが経営者にあり挑戦していれば、市場は株高と言うプレゼントで経営者を応援します。しかし需給関係だけで上がる仕手株はいつか必ず下げます。そうして安くなった株を買っても元の株価に戻りませんね。嘗ての仕手株の宮地鉄鋼や兼松日産などはその良い例です。会社の成長と供に株主も潤うのが理想的な投資だと考えます。経営者の選択なのでしょうが、この楽天と言う会社はツキがありますね。高評価の時期に上場を果たし多額の資金を手に入れます。そうして会計基準の変更の際どいタイミングで難を免れ処理が可能になっています。中国に投資していた旅行会社の売却など、私には運に恵まれていると言うか…選択が素晴らしいと言うか…人間と一緒でツキという要素も重要な判断基準かもしれませんね。