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利益の質(2007年10月13日)


上記の株価推移と業績の変化率を比べて下さい。ヤフーはインターネットと言う新しい市場が生まれその恩恵を受けている会社です。一方、商船三井は不定期船の比重の高い船会社です。ご承知のように「ベルリンの壁崩壊」以来、共産圏の国々が市場経済に参入して市場規模が膨らみ、BRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)などの新興国が1989年からの市場参入によりGDPが増えたので購買力が上がり資源価格の高騰と共に品物を運搬する海運運賃の高騰が見られています。よって、その恩恵を受けているのが商船三井です。商船三井は郵船と比較し不定期船割合が多く、市況の上下に業績が影響されます。下にバルチック海運指数のチャートを載せました。

ここではPERについて考えてみます。
ヤフーの一株利益はおよそ1157円で株価が51200円ですから、PER=株価/一株利益で44.2倍です。一方、商船三井は一株利益が129円で、株価は1978円ですからPERは15.3倍です。およそPERで3倍ヤフーの方が高く買われています。何故でしょうか?
ここで利益の質が問われるわけです。利益の中身で継続的に上がる利益が一番です。一度計上できれば、時間の変化に関係なく失われずに利益が計上し続けるものですね。安定的な利益の中には、公共料金、電力・ガス・水道・通信費などがありますね。次に食費や医療費は景気の波に関係なく一定の利益になりますね。ところが同じ利益でも優先順位の低いものは贅沢品などでしょうか? 衣料費(下着)は、ある程度、定期的に必要でしょうが、ブランドもののワイシャツやブラウスは生活の必需品ではありませんね。やはり景気の波に影響されるでしょう。
他には玩具の利益は一時的なブームが多いですね。今、流行が復活しているルービックキューブなどもそうですね。本来はゲームもそうなのですが…任天堂の場合は、若干、意味合いが違うかもしれませんが評価は分かれます。証券会社の収益も市況に影響されますし、不動産価格も景気の波に影響されます。本来はあまり好景気が続くわけがありません。
新しい市場の利益と言うのは黎明期があり成長期があり、成熟期を向かえやがて衰退していきます。ネット産業は黎明期から成長期に移行したのでしょう。既にウインドウズ95が生まれ、もう直ぐ10年ですからね。ゲームはどうかな? ドンキーコングが生まれたのは…20年以上経ちますね。ゲームの世界は限られた新しい市場を創りました。インターネットはもっと大きいですね。一方、海運はスペイン艦隊の頃からあるのでしょうか?新しい市場が誕生する時に、そのリーデング・カンパニーの株を買うと、ものすごく儲かるということは歴史が証明しています。
通常の利益は売上高に対し10%程度のものです。しかし効率化された会社の利益は違いますね。インテル、マイクロソフトなど製品で覇権を得た企業は高い利益率を挙げています。このように売上高営業利益率が高い会社の売り上げが20%も成長するということは、利益も大きく伸びるということになります。故にヤフーの方が高いPERで評価されています。
通常、市況もののPERは10倍以下が妥当な水準です。商船三井が15倍の評価を受けているのは、まだ伸びるかも知れないからですね。期待感が組み込まれているのでしょう。しかしバルチック海運指数などが下がると、途端にPER10倍以下に向かって動くことでしょう。何故なら採算効率が高いから、既に大量の船舶が発注されています。港湾設備も改善されています。市場と言うのは儲かる所に、資本と人材を集める所です。故に正しく富が分配されるのです。早めに見つけた人は多くの富を享受され、だんだん儲けが薄くなると人が離れていきます。自然の原理ですね。
私は市況ものの利益は一時的なものなので低く考えています。代わりに独創的な利益、誰にも真似できない技術で成り立った利益には高い評価を与えて良いと思っています。競争相手がなかなか生まれないために、一つの技術で長い利益を享受できます。一番良いのはその利益が蓄積され、増え続けるのが最高ですね。過去、日本にも多くの成長株が生まれています。トヨタもそうでしたし、松下もソニーも成長神話を作っています。最近ではセブンイレブンもそうでしたね。今ではスーパーのイトーヨーカ堂に吸収されセブンアイになりましたが…最近ではやはりヤフーでしょう。
単にPERを比較するのではなく時代背景を考え、利益の質を問うと良いでしょう。