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金利裁定(2006年12月09日)

最近の相場では、新興株式の値下がりからの反省で、流動性の高い大型株式が物色されています。しかも配当利回りを重視する投資主体が市場のリーダーになっていますね。しかし金曜日の動きに代表されるように、人間は投機性を求めるのでしょう。東京電力から新日鉄、住金へと市場の流れは流れています。人間は面白いもので、大きな損失を被ると保守的に変化するのですね。しかし投機性は何れ芽生えるのですが…

そこで今日は日本株式の水準と金利の問題に焦点をあてて考えて見たいと思います。株価は若干上がり日経225種の予想PERは現在19.04倍です。そうして日本国債の10年物の相場は1.690%ですね。人間は投資したお金のリターンを考えます。

r20061209a.gif銀行預金だったら、A銀行が金利3%で、B銀行だったら金利が1%なら、誰だって金利の高いA銀行に預金しますね。この考え方が金利裁定と呼ばれる考え方です。

ここで、もっと頭の良い人が登場します。B銀行からお金を借りてA銀行に預金をしてその鞘を稼ごうとするのです。つまり100万円のお金をB銀行から借りてA銀行に預金します。そうすると、仮に貸出金利が預金金利より1%の上乗せ幅だったら、A銀行の預金金利から3万円をもらいB銀行に貸出金利を2%払うと1%の鞘が生まれます。つまり100万円で1万円儲かるわけです。これが裁定取引と呼ばれる手法です。

最近まで市場で話題になっていた「円・キャリー・トレード」は、日本の安い金利(1.69%)で資金調達して、米国債(4.44%)などで運用する取引です。これも金利裁定の考え方で始められた取引です。しかしリスクもあります。為替相場ですね。1ドル=114円のまま、1年間推移する保証は何処にもありません。そこで色んなヘッジをかけて金利裁定をするわけです。勿論、投資した時点より円安になれば、為替差益も得られる事になり、金利の裁定分プラス為替差益になり膨大な利益になりますが…逆のケースは多大な損失を被るわけです。

株式にも同じような金利の考え方があります。それは益利回りと言われるものです。先ほどのPERの逆数は益利回りになります。19.04倍ですから、1÷19.04=0.05252となり、5.25%の益利回りになります。これは株価を一株利益で割ったものがPERですから、PERは利益が同じ水準で、全てを株主に還元すると、PER19倍とは、19年経つと投資した金額が戻るという尺度ですね。預金金利も同じです。5%の金利と言うことは20年経つと預金した金額に金利の合計がなるということです。

ここでイールドスプレッドと言う考え方が生まれます。つまり市場金利を元に益利回りを引くと、どのくらいの鞘が得られるかと言う指標です。安い金利で資金を調達して株で運用するという考え方ですね。市場金利が1.69%で株式の益利回りは5.25%です。なんと3.56%にも回るのです。勿論、円・キャリー・トレードの為替リスクと同様に株式の価格変動リスクや信用リスク、流動性リスクなど様々な障壁が考えられます。しかし逆に潜在成長率があるかもしれませんね。利益成長が続く。この辺りは為替のリスクに似ています。

東京電力は、その中でもリスクが低い銘柄なので最近人気になっているのです。いざなぎ景気越えを迎え、大口需要家の電力消費量は増え、東京電力の業績は良いし、配当も来年の3月にもらえる。年間60円配当だとすると、株価は3660円で配当利回りは1.63%になる。一株利益予想は214円で、17.1倍のPERなので、益利回りは5.84%もあるから株は買える。と言う判断なのでしょう。

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しかし日銀が利上げをすれば金利は何れ2%を越えるでしょう。そうすると東京電力を株式として持っているリスクと国債のリスクは逆転しますね。今でも既に逆転しています。保守的な運用の投資家層が、そう多く存在するのでしょうか? やはり私には現時点では、買えない銘柄ですね。

通常、東電のような安定収益の会社のPERは10倍前後が妥当なのでしょう。PER20倍と言う評価は収益が成長しなくては成り立ちません。最近考えるのはいくら含み利益があり、これから地価が上昇したと仮定しても高すぎるPERの不動産株の株価です。PER30倍を越える評価は現時点では高いと思っています。

企業業績の会社の立ち上がる時期に合わせPERを評価すべきです。赤字から黒字に変化する時は過去最高利益を元に、仮にその水準まで利益が回復したら一株利益はいくらになり、その時点の業種別のPERで評価をするのも良いでしょう。それぞれ会社の成長スピードに合わせPERの評価を買えるのです。既に過去最高の利益を更新している会社は、利益成長が続く可能性もありますが、そこ時点をピークに落ちる可能性もあるのです。仮に腰折れが見れるなら、PER10倍台に引き下げるべきでしょうね。