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負け惜しみ(2006年09月24日)
最近、良く考えるテーマは、何故、新興株はここまで売られたのか? …と言うことです。
1、幾つかの現象が複雑に絡み合っているのでしょうが、一つは景気循環と言う観点から考えて見ました。通常の景気サイクルと相場の流れは、不景気になると金利が下がり、必要経費を減らす政策が採られ、企業は採算ラインが下がりますから利益が出てきます。同時に需要不足のために政府は財政出動を実施し、公的支出を増やし需要を喚起し経済を活性化させます。また減税などにより需要を刺激します。(金融相場)
やがてこれらの金融政策や財政政策は、民間需要に結び付き、需要が供給を上回り設備投資が始まり景気が更に膨らみます。この頃になると、人手が不足し人件費が上がり所得が増えますので、消費が刺激され個人消費中心の景気回復になるわけです。GDPに占める個人消費の割合が一番多く6割近くを占めます。(業績相場)
この段階が金相場場から業績相場の株価上昇場面です。2003年からの金融危機からの金融相場が今年の春に終わったのでしょうね。そうして中間反落を経て業績相場へ移行中なのでしょう。国内景気の回復度合いは非常に鈍いのですが、緩やかに景気は回復している局面です。
2、従来の教科書通りでないのが、世界経済の動向です。現在のわが国の経済活動は世界経済と密接に結び付いており、日本の景気は貿易統計以上に大きな影響を受けます。市況関連の価格動向など、大きな影響を受けるわけです。当初、BRICsの台頭は日本経済にデフレ要因を多く作りました。一番大きかった現象は日本企業の空洞化現象でしょう。わが国の企業は輸出競争力を維持するために、人件費の安い中国などへ積極的に投資し生産工場の移転に取り組みました。その結果、国内の雇用が失われ日本経済の低迷期は長引いたのですね。
ようやく中国の消費が世界経済へ拡大の恩恵と弊害を与え始めています。GDPが1000ドルを越え、沿岸部では5000ドル以上になり、世界の需要を刺激しています。この為に一次産品の価格が急騰し、投機資金の介入もありCRBなどの指標が急騰したのですね。しかし各国の中央銀行が金融引き締めを実施し投機資金が制限され始め、商品市況への影響が出始めたのが最近です。ヘッジファンドのアラマンスの損害がその事実を物語っています。
これらの動きとアメリカの景気動向は、長い間、順調に拡大しています。これを受けわが国のグローバル企業である国際優良株の株価は1993年ごろから上昇波動に入っています。グローバル経済の拡大の流れが相場の底流にあります。自動車、電機などの製品が世界中に普及しています。この動きと投資信託の銀行窓口販売が結び付き一般株式の、特に国際優良株の値持ちがよく投信相場が進行中です。
3、更にもう一つの流れが存在します。それは技術革新の流れですね。インターネットをはじめとするIT化の流れが存在します。所謂、景気循環で言うコンドラチョフの波ですね。インターネットの普及は大きな時代変化を生んでいます。産業革命以来の出来事でしょう。特に日本のように報道管制が行われていた国の変化は激しいものがあります。人々に意識変化を強く生み出す原動力になっているのです。
これまでの日本人は与えられた条件下で日本の秩序を守るために努力してきました。画一化教育の影響もあり、与えられた範囲で生活すれば豊かさが増してきたのです。しかし1985年以降の日本経済は、この豊かさを日本国民全員へ享受できなくなったのですね。鉄鋼業界をはじめとするリストラの嵐が起こり、終身雇用と年功序列が崩壊します。一流大学を出て、一流企業に入れば、豊かな生活と老後が保障される仕組みが崩壊しました。故に社会変化が起こっています。この時代の潮流を掴んだのが孫正義氏を代表とする新興産業の隆盛です。故にヤフーなどの成長株が誕生したのでしょう。
現在、起こっている市場の流れは上の三つに集約できるでしょうか? 法令の改正により来年は三角合併が容認されM&Aと言う流れが加わる事でしょう。
どの潮流の波に照準を合わせるか? この考え方が難しいのでしょう。3番目の考え方は変化が激しく社会の認識を得られていません。ITバブルの崩壊と復活はその過渡期ゆえに起こる現象なのでしょう。ソフトバンクへのアナリスト見通しは大きく割れています。最近は従来的(古典的)な考え方が多く、あまり夢の部分に触れられていませんね。
ヤフーも上場当初の1997年の売上は、たった4億13百万円だったのです。その後、12億69百万、19億14百万と続き、ITバブルが崩壊する2000年は56億95百万円しかない売上なのですね。この会社が来年の連結では2250億円の売上企業となるのです。こういう事例がある以上、あながち、ミクシーのPER200倍も馬鹿に出来ないかもしれないのです。しかし最近の新興株式はこの夢がはげ、軒並みPER50倍程度まで売られています。
一つは楽天のように売上と利益の向上の為に、収益になりやすい証券や消費者金融と言う部分の吸収がありますね。従来型の企業を内部に取り入れているのです。故にヤフーと楽天のPER評価が違って当然なのです。グーグルのような形を目指すのか? この点は経営者の力量なのでしょう。ソフトバンクも従来型の通信分野での覇権争いを演じていますが、その狙いは何処にあるかが重要です。見事にネット社会との融合を演じることが出来れば豊かな社会演出が可能になり、メリル、リーマン、クレディーなどのアナリストは敗北するでしょう。しかしその可能性を市場が支持せずにファイナンスの道を閉ざせば、ソフトバンクは敗北します。
何故、かたるは最近になってソフトバンクを再び支持し始めたか? と言えば、日本と言う国にとって、IT化は加速度が非常に重要なのです。その為にはネットと通信が融合し新しい情報社会を構築しないと生産効率が上がらないのです。NTTなどに委ねると時代の潮流に遅れてしまうと考えています。故に市場関係者はソフトバンクの戦略を支持し、社会に貢献しないといけないと感じているのですね。
現在、考えられる株の流れは3つあります。株で儲ける事が主眼ですが、そんな事は後からついてくることです。僕らが正しい豊かさを信じそれを求める限り、道は自ずと開け、やがて、そのご褒美が、あとで帰ってくると信じています。多少、目先的に株が下がって損を被っても関係ないのです。投資の姿勢とはそんなものだと考えています。