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キャッシュフロー(2006年04月22日)

最近になって、個人投資家の銘柄が弱く、機関投資家好みの銘柄が強い二極化の動きが見られます。PER100倍と言う評価は素晴らしい成長株にしか与えられませんが、値動きを重視するあまり、業績を無視した株価まで買っていた幻想が、徐々に冷めてきたのでしょう。代表的な銘柄がソフトバンクです。この会社は売れない株式の時価評価を、今でもIRに登場させています。しかし貧乏をすれば、子会社の紙くず(株券)は叩かれ、相手の言いなりで売らなくてはなりません。双日がそうだったですね。世界NO1の鉄鋼商社のメタルワンを三菱商事に、今日、日経新聞に載っているLNGジャパンを住友商事に…、貧乏すると有望な子会社を売るはめになるのです。

個人の力は弱まり、郵貯・銀行からの投資信託の買い、日本生命などの機関投資家の買い、ようやく外人頼みだった株式市場も、本来の主役が復帰し始めています。今、証券会社の自己売買部門は、投信などの需要の先回りを始めているのでしょう。このような現象を考えると、現在の優良株相場は、6月までの期間限定商品と言う読みが働きます。しかし需要予測からの銘柄選択も、チャートから銘柄を選ぶ行為に似ています。多くの個人投資家は一番大切な業績動向を、ほとんど見ていないように感じます。しかし財務分析は過去のデータなので…株価は6ヶ月先をみて動きますから、タイムラグは生じますね。1四半期の数字より、継続的な業績推移を見て、業績の流れを読む力が必要になるのです。今日は引っ掛かりやすい例として、損益計算書とキャッシュフローについて簡単に考えて見ます。

このキャッシュフローには営業活動によるものと、投資活動によるもの、そうして財務活動によるものの三通りがあります。ここで一番重要なのは営業活動によるキャッシュフローです。
先週のコラムでベンチャーリンクに再び強気に傾いた理由で、急激に改善した営業キャッシュフローの話しをしました。中間期から第三四半期に変化した原動力は、FC事業の好調さを物語ると判断したのです。株価は損益計算書の一株利益によりPERが判断されますが、実はデータ上はフリーキャッシュフローの変化が重要になるのです。

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ここで前回のおさらいです。多くの場合、僕らは一株利益の何倍まで株価を買うか? を考えます。この基準は右のグラフのような傾向があります。いくら好業績でも変化率がなくなると、PERの評価は低くなっていきます。普通は、この業績の変化率が問題になり、変化が強く長いほど高い評価をもらえます。前々回のかたる銘柄のベクトルの話しですね。

一株利益の質の問題を取り上げます。
子会社売却などの一時的な利益のものは、営業活動で稼いだ利益と違い価値が下がりますね。(投資活動による利益)今日の日経新聞には、新日石の減益予想記事が載っていました。そうなるか、今のところ分かりませんが、原油相場は70ドル前後で推移するなら、減益になるのでしょう。逆に100ドルを越えれば、備蓄分の利益が生まれ、増益になるかもしれません。原油と言う製品在庫の価値が上がるわけですね。しかし一時的な利益の評価は低いのです。

非常に大切なのが、営業キャッシュフローです。キャッシュフローとはお金の流れですね。業績がすこぶる好調でも在庫品が貯まれば、キャッシュフローは減りますね。利益が上がっているのにお金がない。昔、知り合いの東芝の社員のボーナスが現物支給になったと言う例を、何度か聞きました。製品在庫を捌く為に現物支給をしたのです。今、デジタル家電業界はワールドカップ需要を当て込んで、大増産していますが、狙いが外れたら製品在庫が貯まり、利益は出てもお金がない状態になります。前回のパイオニアが大赤字に陥った原因の一つです。損益計算書では分かりませんが、キャッシュフローでみれば分かるのです。製造業の場合、在庫品の推移に注意が必要になります。

もう一つ、損益計算書とキャッシュフローでは、大きな違いの原因に減価償却費があります。建物を建てたり、機械を買ったり、その代金は買った時に現金で支払います。しかし会計上は、毎年、経費として計上されます。その分の減価償却費のお金はキャッシュフローでは増えるのですね。この2点が大きな違いでしょうか? 投資のキャッシュフローは、普通はマイナスになります。借金を返していれば財務のキャッシュフローもマイナスになります。

利益の中身が非常に重要です。何年も続く営業キャッシュフローを伴わない利益は見せ掛けなのです。ソフトバンクは、色んな仕掛けを上手く利用し高株価対策を実施し、市場から上手く資金調達をしている会社の代表選手です。まぁ、もともと装置産業ですから、先行投資が膨大にかさむのです。しかし、一度基盤を確立させれば、恐いものはない。ここ数年が正念場でしょうね。故に今の株価人気が沈静化するのは道理ですね。毎年、財務キャッシュフローで経営を賄っているのです。個人投資家が値惚れで買う株とは違いますね。この点を留意して下さいね。「下手なナンピン、スッカンピン」と言いますよ。

この営業キャシュフローに設備投資などを加えたフリーキャッシュフローが重要な投資判断の一つだとされています。機関投資家はこの利益推移を見ながら、銘柄選択をするとも言われているようです。四季報には必ず、営業、投資、財務のキャッシュフローが載っていますから、一株利益を見る上で、その点を参考にするといいですね。個人投資家はチャート波動を信じ売り買いをするようですが、どうでしょう? カタルの経験から言うと非常に危険なように感じます。最近の個人投資家は値動きに付いて行っているだけですが、プロが多く参戦しており、そのスピードに勝てるのかな? 限られたテクニックで儲けられるほど相場は甘くはないでしょう。 

既に、デートレで儲かる時代は終ったような気がしますね。ライブドア・ショックは世間に一石を投じましたが、地検が動いた効果があったのかもしれません。UFJの時も僕は権力の乱用だと感じました。ダイエーの時も…しかし、それぞれ選択は難しかったのですが、時代は教訓を残し進んでいるようにも感じます。個人投資家の皆さんが残って欲しいのです。頑張れば儲かるのです。ここに来てやられている個人投資家も多いでしょうが、頑張って下さいね。6月を境に再び相場の流れが変化するでしょう。

バーナンキ新理事長の就任が決まってから、かたるは新理事長の試練説を採用しました。三菱商事は新高値になっていますが、双日は未だに新値を取っていません。しかし理屈は変わらない。一流から二流へ、更に三流へと流れは進むのです。だから個人投資家の見捨てる銘柄が安くなれば買いなのでしょうね。ここからの投資は国際優良株を買うのではなく、個人が見捨てる株を拾うのが筋のような気がします。一度に買うのではなく半値に落ちても買えるような投資の仕方を心掛けて、少しずつ買えば良いのです。持ち株が下げてきたら、投げるのではなく、買う準備を始めれば良いのです。どれを残すか?選択し、狙いを定めたら下げたら買い、下げたら買いと繰り返せば、どんな株でも必ず儲かるのが理屈ですからね。

大型株から中・小型へ流れは不変なのですよ。既に時価総額は560兆円を越えているのです。