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比較優位から付加価値へ(2013年04月07日)

先ずは金曜日の相場を見て驚いたことに、第一生命などの生命保険会社の株価が下げています。何故でしょう? 僕には奇異な姿に映り調べてみたら…、どうも超長期国債の利回り低下によりEV(エンベディッド・バリュー)の減少が予想され、アナリスト達が一斉に生保の目標株価を引き下げたようですね。僕はEVを知らなかったので、第一生命の解説をざっと読みましたが…奇妙な現象です。日本人が如何にイワシ民族で、偽物社会かの一端が分かる気がします。各アナリストに悪いから、個別の名指しは控えますが…、資産価格が総体的に異次元緩和により膨らむわけで、確かに国債の利払いによる収入は下がるでしょうが、他の資産価格は基礎的な価値から大きく乖離している現状を考えれば、生命保険も異次元緩和により持っている資産が上がりプラスに働きますね。フローの収入が多少減っても、それ以上の資産効果がある筈です。それに生保の配当などは毎年収益により変化しますよ。包括利益の考えは、そういう事ですよね。だからケネデックスの株価が大きく上がっているのに…、生命保険の株が下がるのは間違っています。なんだか柔軟性の無い日本の社会構造を物語っている様で…一言、カタルの考えを書き加えました。

昨日は「比較優位と空洞化」の解説をしましたね。
「失われた時代」を作ったのは、基本的に金融機能の無視であり、資産デフレである資産の劣化などが主要因ですが、同時に起きたベルリンの壁崩壊からのグローバリゼーションによる比較優位の広がりが、先進国の空洞化を生んだわけです。特に日本は年功序列や終身雇用などの「会社が命」と言う固定観念が強く、グローバル価格から遊離した日本の独自価格である鎖国政策により、内外価格差が大きく存在していましたから、この是正に時間が掛かりました。このイメージは国際価格と国内価格が今でも大きく乖離する「コメ」は象徴的な現象です。昨日はアップルのファブレスを例に掲げましたが、日本のニトリやユニクロは同じことを自前で構築し、このデフレ時代に大きく伸びた企業の成功事例です。ニトリはベトナムやインドネシアで家具を作り日本に提供していますし、ユニクロは中国からベトナム、最近ではバングラディッシュに、インドネシアなどに生産設備を設けて、世界に輸出しています。このような行動は、自然な理に適った動きなのです。リカードの「比較生産費説」、「比較優位」の方が良いかな?と言う考え方は、効率化を求める市場原理では当たり前の現象ですね。

欧州は未だに構造改革が終わっていません。スペインでは55%の若者が失業中だとか…好調に思われる米国の若者の失業率は18.4%と、依然、高いままです。日本では「パラサイトシングル」と呼ばれる若者の親への依存者が増殖しています。自立できない世代の増加ですね。この原因は新興国への先進国からの生産移転が主な原因ですが、この流れを加速させたのが、金融デリバティブによるリスクを軽減させた手法ですね。鄧小平が「富める者から豊かになれ」と言う格差を容認した市場開放の南巡講話は、世界の転機を示していたのです。とうとう日産自動車が、先ずはマーチからタイへ生産を移転したのは、ある意味で象徴的な出来事だったのです。かたるがホンダやトヨタは、もう自動車を作るのをやめて、ロボットを生産しろと述べている理由は、此処にも存在します。ファナックを高く評価しているのは、色んな背景があるのです。

法政の渡部教授の何に、カタルは惹かれたのか? それは中国の生産人口のピークの試算ですね。中国は1万、日本は2万5千ドルと言う部分で、生産人口は低下し始めるとの部分です。一人っ子政策の弊害です。中国は日本のシステムを模倣して、固定資本形成などをフル稼働させて、高い成長率を実現させてきました。今では最新鋭の戦闘機を3D技術で作れるほどの生産技術を確立させています。生産人口がピークを打つという事は、これからの伸び率が落ちる事を示します。経済の基本的な概念は、「比較感」なのですね。人間の豊かさ、感情の推移は、何によって起きるか? 私はマネタリーベースと前年度比の変化率を掲げましたが、白川時代の日銀は、先進国なかでも米国の緩和姿勢に、日本は負けてないと述べ、むしろ日本の方が緩和状態だと述べていました。事実、その通りなのです。量的緩和の中央銀行の量を、GDP比で見れば、日本は既に一番、緩和状態にしているのです。しかし、なかなか経済の資産デフレは止まりませんでした。白川さんは市場が結果を判断する云う原理を知らなかったのですね。市場との対話に成功したグリーンスパンと失敗した白川さんの違いは大きいのです。2010年10月の包括的金融緩和は、すごい事なのですが…メディアはなかなか理解しませんでした。今でも…リスク資産の買い入れの意義を理解していませんね。

かたるは2006年の日銀の金融政策を、最近では強烈に批判しています。当時の総裁は福井さんです。速水、福井と…よくも揃いもそろったり…。経済のイロハも知らない日銀上がりをよく使ったものですよ。人間の感情は、比較感で動くのですね。隣の奥さんより、私の家の方が恵まれているわ。ハハハ…。私たちも苦しいけれど、まだ隣の家の方が大変で可哀そうね。ワハハ…この人間の感情は面白いものです。要するに人間の感情は、変化率に反応するのです。何故、カタル銘柄が良く上がるのか? 当たり前ですね。みんな赤字企業のボロ株を選んでいます。シャープを好むのは、失敗しているからです。金もないのに踊らされ、亀山工場の償却も済まない内に、堺工場を建てるのは…馬鹿な幻想への傾斜だったのです。片山さんの時代かな? きっと株をした事が無いのでしょう。株式投資をすれば…日本の現状は、自ずと見えてきます。カンフル剤である一時的な補助金政策のエコポイントなどに踊ることはなかったのです。株をやっていれば、本質を考える事が出来ますね。

カタルは…何度も上がる銘柄などは、もう決まっていると…述べているのは景気循環や経済の仕組みを理解すれば、自然に分かるようになるのです。カタルがチャートなどを二の次に考えているのは、本質を常に考え、株が上がる背景を考えているからです。経済環境を重視してカタル銘柄が選別されます。「マネタリーベース」から「信用創造」の意味が、皆さんには理解されたでしょうか?

ここ最近、カタルはこの信用創造から成長戦略に軸足を移しつつあります。それは先進国への回帰現象が量的緩和により、更に進むと考えているのです。特に日本では…。皆さんがお金持ちになると、どうなりますか? 最初は会話さえ出来れば良かった携帯電話が…カメラ機能が搭載され、最近はスマフォのようにパソコン機能まで付加されましたね。人間は常に変化を求め続けます。付加価値を求めるのですね。究極の豊かさは文化ですね。芸術ですよ。音楽に絵画…豊かな時間です。それを実現させるために、命を保つための医療、美しくみせる美容、たのしい会話を実現させる教養、時間を楽しむ娯楽などの…非製造業が栄えます。ネットの世界では、間違いなく知的好奇心を刺激する分野が、大きく伸びるでしょう。ホリエモンがニュースの批評を新ビジネスに掲げた意味を、瞬時に理解された方は、レベルが高い人ですね。

カタルの原稿を参考に、自分なりの相場観が形成される方も居られるでしょう。何もカタルの考え方が、正解の訳ではありません。カタルだって何回も、自分の考えを、相場を見ながら修正しています。市場経済とは、市場が行く末を決め判断するのです。あとはタイミングなのですね。この時間の壁がなかなか越えられないと…カタルは何度も述べています。これを克服しようと編み出した、カタル独自のσ理論のチャートを…007のケースで掲げて置きますから、皆さんも眺め自分なりに考えてみれば良いでしょう。

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