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コラム

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円安と株価(2012年12月30日)

謎が深まり理解不能な現象が生まれています。
先日、2005年からの日経平均株価と為替の相関関係を調べ相関係数が0.89と極めて高い数字だと述べました。確かに近年は為替が円安になると日経平均株価が上がっていたのです。しかしどうも僕にはこの現象はおかしいのでは…と思うのですね。通常、通貨高になればその国に投資して利益を得られますが、通貨安になれば投資しても為替分が相殺され投資額は減る訳ですね。だって、もし自分が米国人なら日経平均株価は上がっても為替が円安になればその分が損をしますね。1$=79円が1$=87円になれば、ドルで生活する人はおよそ1割も目減りしますね。

そこで時代を遡り長いデータでも検証してみました。バブル期以前(1989年)の相関関係は、円高が株高に繋がっていました。1971年から1989年末までは、実に-0.84で完全に今と違い逆相関関係にあります。つまり円高になると株は上がっていたわけです。理屈的にもこの方向性が正しい筈です。円が買われる環境なら日本株に投資しても株式投資効果と為替効果で二重の効果が生まれ投資は最適になります。1971年から2012年末まで調べると-0.57と逆相関の関係ですね。つまり円安≒株高ではなく、株安なのですね。ただここ10年間は円安が株高に結びついています。この理由はどうしてなのでしょう。日本の構造的な問題なのでしょうかね?

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90年代とそれ以降の日本では空洞化の調整が行き過ぎていたのでしょうか?どうもこの解釈が正しいような気がしますね。僕には小泉・竹中改革のUFJ事件は行き過ぎていたように感じます。小泉政権の誕生は2001年4月です。その弊害が現在の貸し渋りに繋がっているのでしょう。あの強引な不良債権認定を行った金融庁の態度が、現在の日本の金融機能を駄目にしたのですね。やはり山一倒産辺りで留めるべきだったのでしょうね。その陰で異常な不良債権処理が行われ、外資系のファンドは、当時、ボロ儲けしました。僕の友達が大儲けして、世の中に出たのもこの時期です。何しろ金融庁は、兎に角、不良債権を減らせの一点張りで、妥当な地価より1/10の価格で処理を迫られた物件もかなりありましたね。いきなり10倍ですよ。この表現はオーバーですが、買い手が不在の所に、大量の不良債権処理の為の投げ売りが、金融庁の指導で実行されたのですね。この時期に土地転がしをすれば、確実に数十倍程度の資産形成ができました。その為にみずほが58300円に、つまり58円台に急落します。

何故なら、双日(日商岩井)は多少のいかさまをして生き延びていますね。鐘紡などまで広げたスキームは、やはり失敗だったように思いますね。しかしこの反動もあり、一度、大きく回復したのですが、体力がない為に世界的な金融危機で再び沈んだのでしょう。この世界危機は、金融機関の自己資本比率規制強化に繋がり、我が国の総資産経営は痛手を受けます。その為に自己資本を、みずほは2.26倍、三井住友は2.43倍、野村は1.95倍、三菱UFJは1.41倍(2.16倍)、三菱はUFJとの合併が2005年の10月でやはり1.41倍と見るべきだと思います。…とそれぞれ発行株式総数が増えています。賢いのは、この点でもやはり三菱ですね。

ここでドル換算の日経平均株価と円換算の日経平均の10年間の推移を比べてみます。下の通りです。上記の長期の日経平均株価と合わせてみると…今回の株価波動は2007年2月の高値まで伸びても不思議ではありません。もし本格的な構造改革を迎えることが出来るなら…(国の借金が減り始める正常な状態が作れるなら)、1996年6月の22750円も視野に入るのでしょう。そうして最高値38957円の奪回ですね。先ずはリフレ政策による資産価格の上昇への期待感だけで、2010年4月の11408円をクリアするのでしょう。この辺りが当面の目途ではないかと推測しています。

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おそらく行き過ぎた空洞化の是正も始まり、国内回帰する産業も出てきても不思議ではありませんね。何しろ日本は世界最高水準のビジネス環境です。中国は第二の経済規模ですが、知的財産権の侵害など…環境は整備されていません。為替の水準は100円前後を目指すのでしょうね。纏まりのないレポートが続きますが今回の検証を通じて、少し背景の知識が補われてきたようです。昨日のレポートもそうですが、株価が上がるには必ず背景がありますね。その背景を理解して銘柄を選択することは大変重要です。