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投資のタイミング(2012年11月25日)

今年も間もなく終わりそうですね。1989年のバブル相場はやはり異常だったのでしょうかね? 僕が証券界に入社した頃の日本株は8000円で、NYダウは一ケタ違う800ドルだったのですね。それがいつの間にか逆転しています。NYは10倍になったのに…日本は横這いですね。30年以上の空白か。一つの理由は非効率な資金配分です。この所、マネタリーべースと株価から「信用創造」の話をしていますが、日本は東西冷戦下において、土地担保金融の仕組みを構築して総資産経営を実施してきました。具体的に総資産経営とは規模の拡大を示します。売り上げさえ伸ばせば、利益率はどうでも良かったのですね。この経営が成り立った背景は規模の拡大により資産が増え、その資産が従来は膨らんできたので、多少、経営の失敗があった時は、その資産を売却して穴埋めに使う見せかけの経営を長らく実施してきました。この事を総称してカタルは売り上げ重視の経営を総資産経営と述べています。この中には見えない援助も含めます。よく日本は恩を売るという事をしますね。NECは今回、ルネサスにその恩を売りました。本来は必要のないお金ですよ。しかし日本村社会の参加料のようなものですね。この連帯意識も総資産経営の中には含まれています。

故に、我が国の邦銀は経営に必要ない土地を買い、店舗を拡大させ、株式の持ち合いをして成長してきましたね。しかし土地担保融資が減ったら…収益の源泉を失いました。純粋に事業融資を見て来ませんでしたね。だから担保はあるかとか、保証人はどうだとか…を気にしていたのです。自分達が融資に対し事業が伸びるか?とか、この融資により経営が成り立つか?…とか、そのような判断は二の次だったのです。土地担保による信用創造が失われた時代、本物の事業経営者の時代になり、右往左往しているわけです。

先程、テレビで野田総理が、多くの人は土地や株を持ってないから上がってもインフレになるだけと、安倍さんを批判していましたが…彼は財務省論理の代弁者ですからね。でもわかっていませんね。やはり馬鹿政治家と言うか…みんな政治家のレベルは、あの程度なのでしょう。安倍さんもそうだし…真剣に考えた事が無いのですね。土地や株が上がると信用創造が生まれ、ユトリが生まれますね。そうすると人間の行動は大胆になり消費は伸びるし、投資が起こるのですね。だから常に信用創造の重要性を経済では考えないと駄目なのですね。米国はCDSと言うものを保証して信用創造を膨らまし、実体金融を上回る規模まで膨らましたのですね。架空金融の拡大ですよ。金融危機はこの膨らみ過ぎた部分、実体金融と乖離した部分の調整をしたわけですね。乖離した株が下がる原理と同じですね。財務官僚は信用創造の力をよく理解せねばなりません。

更に今日の日経新聞の2面に米国と日本のROEの比較が載っていますが、今述べた総資産経営の実態が映し出されており、今後は固定資本形成による成長ではなく消費による成長、つまり本当の経営の良し悪しにより、付加価値の高い経営が望まれる勝負の時代になります。日本株のPBRが割安なのは付加価値を生まない資産を多く持ちすぎています。東電を見れば分かります。保養所、健康保険組合による診療所、運動グランドから講演設備など…兎に角、無駄な資産を多く抱えています。多くの大企業はそうですね。日立などは代表的な事例です。しかしグローバル基準では、如何に付加価値を高めるか?つまりROEを高めるかと言う効率的な資金配分を求められますね。IAS(国際会計基準)により、ものさしが同じになります。日本の企業も米国の企業も同じ土俵にあがり勝負です。売り上げに対し、如何にコストを掛けずに儲けるか…どれだけ付加価値を生むかの戦いです。この付加価値は人々の心を揺さぶることですね。芸術であり、音楽であり、要するに人々を魅了させるものですね。原価を掛けずに…高い付加価値を生む戦いなのです。

ゲームはある意味で一つの芸術なのです。嫌う大人は大勢いますが…。ゲーム業界のROEは高いですよ。ROEは付加価値を測る物差しで、世界はその競争をしています。故に一人あたりのGDPが、常に競われる訳です。円安になれば日本の一人あたりのGDPはどんどん減りますね。その失われる分、頑張って効率的な資金配分を実施しないとなりませんね。余った予算を年度末に無駄に使う硬直化した仕組みを変えねばなりません。

自民党政権は、コリゴリだと言うのはヤン場ダムや諫早の代表事例があるからです。森政権下のIT投資ならある程度は、意味は分かります。民主党政権下で修正を試みましたが、前原さんの失敗は人間の感情を無視したものだったからですね。今の原発の後処理と同じですね。フクシマの問題は、早く、一度全ての土地を国が買い上げるべきなのですね。そうすれば、被災者は諦めが付き、新しい生活への踏ん切りも付くのです。再開発して戻りたい人は、後で優先的に住めるようにすればよかったのですね。何故、そのような政治決断ができないのでしょう。小者ですね。東電などと言う一民間企業を悪者に仕立て上げ、逃げるのは小者がすることです。兆円単位になれば、国家責任です。その為の法律なのに…トホホ。

一方、日経一面の素材価格の下落の話は、中国の非効率な固定資本形成の拡大による弊害ですね。この点では日本の資産配分の方が、嘗ての大蔵省の方が上のような気がします。構造改革に失敗した後半は、日本も間違いましたが…。中国の場合はスピードを速めた為に色んな弊害が生まれているようですね。ただ一時的なバランス修正でしょう。詳しく見てないので、いつごろ解消されるか分かりませんが、日経新聞が取り上げて一般化させると言うことは終盤が近いのでしょう。商船三井の芦田さんも、ここの落とし穴に嵌りましたね。2006年からの成長は、米国の「影の銀行システムの発展」により成り立ったBIRCsの成長だったのですね。嘗ての造船ブームと同じで、新興国全部が日本化したと思い、投資を削るべきでしたね。まぁ、今の淘汰で最新船に保有船が入れ替わり、将来は良いでしょうが…、この世界景気の回復がいつになるか…各国は財政赤字に苦しんでいるから、大ブームが巻き起こるかどうか難しいですね。幸い、日本はアジア圏ですから、中国は減速しても、アセアンなどの成長国を抱えますから物流は伸びますからね。来年になると船舶も回復の兆しが見えるかもしれません。ただ、かなりの過剰投資だったから…。川崎汽船に投資した小手川君(あだ名はJFさんだったかな?)も、財務指標の罠に嵌ったんですね。オリックスに投資した時には、流石に一流の領域だな…と感心していましたが、川崎汽船は難しいかな? でも時間が解決します。彼の判断は間違ってないので時間の問題だけでしょう。

企業経営者も難しいのですね。設備投資を何処の国でするか? まさか原発事故が起こるとは考えていませんし…日中関係がこれほど悪化するとも考えていませんね。ソフトバンクの孫さんの決断に僕は賛同できますよ。このタイミングで日本の円を借りてドルに投資するわけで、仮に1ドル80円のものが120円になれば…スプリントの株価が上がらなくても5割の儲けですね。全ての点でグローバル戦略に乗っているタイミングだと思っています。だからソフトバンクの株価が上がっている背景も、その点を加味している可能性があります。

シャープの片山さんは何を見誤ったのでしょう。亀山は兎も角、堺への投資は冒険でしたね。でもソニーと同じで優れたDENAを持っているから、アップルなどから支持されて存命していますが…あまり調べてないのでコメントはできませんね。ソニーの出井さんも有機ELなどに拘ったために薄型への後手を踏み、折角の映画やゲームのソフト資産が生きていませんね。勿体ない話です。経営者の投資のタイミングは難しいのです。下は大手不動産のキャッシュフローを追ったものです。何れ、この意味を語りますが、先ずは皆さんがこの表を見て、この意味を考えてみてください。今日は時間がないからね。この辺で…

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