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影の銀行システム(2012年11月23日)

見えない糸からの推測は、所詮は仮説にすぎないわけで、実際にその方向性に向かうか分かりません。昨日の「選択のパラドックス」は、最初に大和証券のCMで用いられていたと記憶していますが、人間は選択肢が増えると買い物をしなくなるそうで…選択肢はせいぜい3~5程度なのでしょう。選択肢が15も20もあると一見すると便利のようですが、かえって選択に悩み、購買意欲が低下すると言うものですね。ホンダのN-ONEは大丈夫でしょうか? さて、田中さんが取り上げておられる「影の銀行システム」と言う記述に関心を惹かれたので、一般化してないので少し解説してみます。僕のページでは何度か「金融デリバティブの発展」として解説してあります。要するに「信用創造」ですね。

経済が発展するためにはお金が必要です。景気が良くなるとか…悪くなるとか…この違いは丁度、電子レンジのようなものですね。電子レンジの構造は食物にある水分子をマイクロ波により振動させて摩擦熱で温めるわけですね。基本的に景気が良くなるというのも同じことで経済の中には人間が沢山いるわけで、その人間を動かせばいいのですね。一所懸命にマラソンをさせても効果は薄く、経済上ではお金を使わないと駄目ですから…お金が盛んに動けばいいのですね。例えば何年も株価が低迷すると、人々の人気は離散し、投資行動が停滞します。カタルがよく引き合いに出す、市場全体のリスクですね。指数による上下で株価が上がっても多くの人は魅せられないのです。ところがJトラストのように29円の株価が2600円にもなれば約90倍ですから…僕が投資しても上手く行けば…と考え投資する気持ちが動くようになりますね。買い物も同じ原理ですね。人々の欲望を刺激して行動を促進させます。人間が動くという事はお金が動きますからね。

さて信用創造とは…行動する為に危険が伴うと皆が躊躇(ちゅうちょ)します。「二の足を踏む」と言う心理にさせては駄目なのですね。株価が急騰すると…あぁ、買っておけばよかったと後悔の気持ちが湧きますね。このような心理を与え、更に誰かが最初に冒険の気持ちで思い切って買って儲かると…これが自信に繋がりこの人は、さらに投資額を増やし投資を続けます。この連鎖の輪が必要ですね。投資に対する信頼感を与えることは非常に重要です。一時、日本はITブームが起こり、小手川君のような存在の若者が誕生します。要すると…それに続こうと、我も我も投資ブームに火が付きますが…若者の懐は浅く、直ぐにITブームは下火になりました。ただ若者は、何故、失敗したか考え、再びチャレンジしますね。ここが若者の特権です。人生に時間があるから何度もチャレンジします。しかし年金生活者などは生活手段がないから、一度、失敗するとチャレンジをしなくなります。2001年からの市場原理導入により外人投資家が2003年に復権し、今度は小泉政権の後を任されたはずの市場原理主義者、安倍政権の樹立が、外人投資家に安心感を与えている可能性が高いですね。特に「日銀に国債引き受け」と誤解を招くような、インフレターゲット論を唱える信者なら、日本は市場経済化の道を再び歩む…んじゃないか?と外人投資家が考えても不思議ではありません。ここに信用創造が生まれる原点があります。

日本の高度成長の原点は土地担保融資と言う信用創造の仕組みでした。ところがバブルの絶頂期にこの仕組みを米国の指摘により放棄してきました。宮澤総理が失敗したと嘆いたマジックですね。人間はおろかな動物ですよ。でも何かの「心の糧」は絶対に必要ですね。先日、孫さんのビデオを見て頂きましたが…彼の心の糧の原点は、彼のおばあちゃんにありますね。あの貧しい時代の経験が「心の糧」になり、人間の行動力を生み出しています。経済も同じですね。信用創造の定着、信用創造の仕組みが確立されないと景気は不安定でなかなか新しいシステムに移行できません。今は移行期ですね。EUの問題もそうですし、この「影の銀行システム」も同じです。

この影の銀行システムは実際の銀行取引ではなく、架空の信用創造なのですね。CDSと言う、もし融資先が倒産したら、その取引の損失を補うと言う架空の信用創造の仕組みを示します。AIGが破たんしたのは、このCDSを補償できなくなったからなのです。何故、このような仕組みが発展したかと言えば、オプションの原理がブラック・ショールズにより確立されたからですね。金融工学、所謂、確率論の数学の分野ですが、緻密にコンピュータを使った計算された仕組みですね。金融取引の保険ですね。生命保険や疾病保険などは有名ですが、金融取引の保険が開発され、この取引額が大きく膨らんだのですね。しかし、いろんなところが推測で影の銀行システムの取引額を発表していますが、(下のグラフはNY連銀のもの)相対売買の店頭取引なので実態が分かりません。故に総枠として自己資本比率のタガを嵌めれば、ある程度は規制が出来ると始まっているのが「バーゼル3」と言う仕組みですね。

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前回の金融危機は、この影の銀行システムが実体をあまりに遊離して乖離したので、その調整として弱体しているリーマンが生贄に捧げられました。市場原理らしい、弱肉強食の仕組みですね。市場経済の仕組み上、必ず、行き過ぎは修正されます。FRBがQE3と言う金融拡大をしているという事は…この「影の銀行システム」(CDSなどを利用した金融デリバティブの仕組み)が拡大していることを示します。だから実体景気は悪いのに、米国の株価は実体景気に大きく先行して回復しています。原油価格もなかなか下落しませんでした。

何故、新興国が急速に発展できたのか? 通常は資金が動きませんよ。ところが安い保険料で投資額が保全されているという錯覚をしていたのですね。信用創造です。金融デリバティブの発展により影の銀行システムが確立され、皆がその仕組みを容認して取引をするようになり、リスクの高い筈の金融取引が実現されるようになりました。その為にBRICsが急速に発展したのですね。何もこの仕組みが悪いのではないですよ。「影の銀行システム」と言うネーミングの響きは悪いですが、この仕組みのおかげでソフトバンクによるボーダフォンの買収は実現され、日本は情報社会の最先端を走っていますね。ソフトバンクがスプリントを買収し、今度はグローバルに船出しますね。この買収を支えるのは劣化している欧米の銀行を乗り越えた邦銀の力なのですね。確かに中小企業円滑法の整理はありますが、それ以上に欧米の銀行が沈んでいるのに…今度は邦銀が活躍できるチャンスになっていますね。どうも…日銀の新手の無制限貸し出しが、寄与し始めている可能性は非常に高いですね。相場をみていると…何か、そのように感じますね。