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コラム

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ベースマネーと株価3(2012年11月04日)

池上彰さんのニュースの裏解説が人気になりましたが…カタルのIRNETはその小型版で株式市場を取り巻く環境にスポットを充てています。例えば今朝の日経新聞で新築のビルが好調だという記事が一面に踊っていましたが…あの背景は震災の影響が在りますね。水面下では既に話題になっているのでしょうが…東京都は間もなく耐震規制を発動するのでしょう。そうすると古いオフィスビルは改築をしなくてはなりません。だからリートは危ないのです。もともとリートの組み入れビルは、採算は合うが古く、価値が薄いビルが母体になっています。だから耐震性で問題があるビルがゴロゴロと組み入れられていると想像できますね。当然、これから修繕費が嵩みますから利回りが落ちるでしょうね。つまりリートは投資価値が薄いという事です。調べてないので分かりませんが、間違いなく耐震基準に問題があるビルが多いのでしょう。果たして、今日の日経新聞の一面だけでそこまで考えを発展させた人は何人いるでしょう。池上さんの解説はこのような形なのですね。この発想や展開力を生かすには、日々の積み重ねが必要です。誰にでもすぐに連想できるというものではありませんね。彼は毎週、数冊の本を読むのだそうですが…1年に300冊程度は目を通し、熟読するのは1週間に2冊程度なのでしょう。その努力がその発想の源になりますね。

実はカタルが現役の頃、駒形重吉さんのマンションに良く遊びに行きました。いつも常務や社長などのカバン持ちですが…彼の発想や物事の考え方に驚かされていました。彼は大光相互銀行を興したのですが…田中角栄と仲のいい友達でした。新潟県は米どころで昔から中央経済界と結びつきがありましたね。ある日、田中直紀が選挙のあいさつに来てお金の話が出たので、駒形さんは佐川急便の親父さんの所に挨拶に行けと言ったそうです。駒形さんがそう言う以上、裏で工作をしなくてはなりませんから、駒形さんは佐川の親父さんに掛け合って、10億円用意するように頼んだんだそうですが…。挨拶に行った田中直紀は、お金の話を佐川さんの前でできなかったのですね。折角、駒形さんが裏で頭を下げ、頼むと言ったのです。直紀が佐川の親父さんの所から帰った直後、駒形さんの所に佐川の親父さんから電話があり、「直紀は金の話ししなかったから、出さなかったよ。」と連絡があったとか…もう駒形さんはカンカンに怒っていました。折角、自分がおぜん立てをして直紀を挨拶に行かせたのに…って具合ですね。裏話ですが…、この話が元にあり、先日、防衛大臣に任命された時に、この人事は駄目だな…と感じたのですね。案の定、国会で失言をして退任しましたが…。ずいぶん昔の話ですよ。僕が現役のカバン持ちですからね。田中直紀さんも若かったのです。でもこのような実体験などの裏付けが、発想の輪になり構想が広がる訳です。

昨日の東京都の地価動向をみれば、不良債権が膨大なことが分かります。加えて問題なのが三重野さんや宮沢さんの後処理の過ちですね。この過ちの為に晩年、宮沢さんは後悔されていました。かれは自分が行った失政の後始末の為に、晩年になって大蔵大臣を引き受けたと話していましたね。キャリア組トップの優秀な宮沢喜一さえ間違うのですね。経済は難しい。何故か? 人間心理であり、国家間の策略が影響するからです。みんなわからないのです。だからカタルは考えられる仮説をいくつか用意し、その検証作業を続け、いつも相場観を修正します。まだ、このバブル当時の後処理が付いていませんね。りそな銀行が代表例ですし、日債銀の後継のあおぞら銀行もそうです。この現実は明らかにおかしいでしょう。20年以上前のバブルの爪痕のツケをまだ払い続けているのです。だから大相場がやってくると言う根拠に繋がっています。20年の鬱憤の蓄積が相場になるのですね。その新しい胎動が聴こえませんか? 何故、私がマネタリーベースと株価の特集を組んでいるか?よく背景を考えてください。

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さて今日は90年代に入り、バブル崩壊後の「C」の部分の検証をしましょうか…。

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特に問題にされるのが第5回目の引上げですね。当時の株価は大暴落の最中ですね。その中で三重野さんは株や土地が下がっても実体経済に影響はないと述べて利上げを実行したのですね。彼は澄田さん時代には日銀副総裁をしていたのです。バブルの主因を造っていたわけですね。1986年10月や1987年2月の引き下げは、過剰供給の原因になったのです。2年2か月に及ぶ長い期間の低金利を続けた失政の責任も三重野さんにはある筈ですね。たぶん、慌てたのでしょうね。資産インフレの原因になった過剰貸し付けの実態を誰かに指摘され…自分達の過ちに気付いたのでしょう。既に1987年から1988年には限度を超えていたのですね。事実、1987年に多くの金融株は天井を付けています。そうして1988年からの株価上昇は先物からの「ねつ造」ですね。作為的に作られた株価操作であり演出です。このような市場の動きを無視していたために、手痛い報いをあとで受けることになります。

余談ですが、三重野さんが重要な副総裁のポストについていた時代背景は、ゴルバチョフがペレストロイカを実行し始めた頃で、これが1986年4月ですね。この年に発生したチェルノブイリ原発事故を切っ掛けにして、情報公開(グラスノスチ)が始まります。情報公開は非常に重要なキーワードになっていますね。そうして1989年のベルリンの壁崩壊に繋がる訳ですから…。情報公開は外部からの監視の力が働くのですね。検察の捜査方法が問題化され、尋問の可視化の話が進んでいますが…情報公開は非常に有効なのです。効率化社会において、隠匿は悪なのですよ。だから日本村論理が崩壊し、市場原理主義が栄えているのです。公正な競争を守る為に…。もし澄田さんにしても三重野さんにしてもこのような時代背景の認識があれば…、このような間違った政策は実行してない筈ですね。近年、ケイジアンからマネタリストの時代になったのも市場原理の動きを観察することが政策の決め手になっています。だから財務省の計画経済を元にした予算編成は古い考え方とも言えます。

日本村論理が崩れ「流動性の罠」の状態に陥るのが1995年後半から1997年代の時代なのでしょうね。この罠を一旦、抜け出すのが皮肉にも2001年9月11日のテロが切っ掛けの金融緩和ですが、その後の動きは金融規制に翻弄されるのです。自己資本比率規制の問題ですね。時代の検証はさらに進みますが、これまで見てきて分かったことは、マネタリーベースの残高は前年比で常に5%以上の伸びを保ち、場合によれば大きく増やしながら市場を監視するという事なのでしょう。日本はフロー重視の考え方が主流ですが、世界は違いますね。為替動向をみれば分かりますが、ストックの重要性が分かりますね。三重野さんは株や土地が下がっても経済に影響はないと暴言を吐きましたが間違いです。

米国の事例もホームエクイティーローンを通じて、住宅価格の値上がり分を消費に充ててきたのですよ。この事実の逆を日本は今やっているわけです。毎年稼ぐフローの可処分所得を資産価格の値下がり損に充てているのです。年金問題等は良い事例です。だからなかなか可処分所得が増えずに景気が悪いのですね。この異常な状態が、間もなく大きく転換します。僕らはもう直ぐ大金持ちになりますね。

これは基本です。つりの浮きのような感覚ですね。沈めば浮くのです。大きく沈めば沈むほど反発も大きいと考えられますね。奇しくも日銀はバブル期の反省が過ぎて、2006年に過剰引締めを実施して失敗しました。あの時代まで日本の実力はあるのでしょう。つまりこの7年間は行き過ぎた沈みの現象でしょうね。この概念はカタルの強気論の背景でもあります。ただ歴史を検証すると…大統領が変わりますからね。中国も、もう直ぐ共産党大会が行われ主導者が変わります。ゴルバチョフの事例を見ても分かるように大きく変化する可能性がありますね。日本もそうだし…条件は整っていますが…いずれにしても、もう直ぐ始まりでしょうね。