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明るさが感じられる(2006年07月30日)
実は、最近の相場観は非常に暗かったのです。今月号の株式新聞社の「ふれあい」に書いた記事の一部用いますと…「思い返すと年初のライブドア騒動から村上ファンド、福井氏問題と続き、アメリカを始め世界中で利上げムード、日本も量的緩和解除からゼロ金利解除まで、金融政策が大きく変化しています。更に、北朝鮮のミサイル問題からイスラエルの軍事侵攻と、国際情勢も不透明ですね。株式市場は年初の信用期日を受け、買いが薄い中、売り物が出る展開が続いています。加えて、自民党の総裁選挙が秋に控えています。更に新興市場の銘柄には決算書リスクまで叫ばれているのですから、株が売られるわけです。」と書きました。
私が政策批判をするときは、大概、株価が低迷している時です。日本株が力強く上昇を続ける為には幾つかの壁を打ち破らなくてはなりません。日本の癌は官僚組織です。道路工事は掘っては埋める縦割り行政の弊害は予てから指摘されていますが、依然、改善も兆しさえ見えません。官製談合の摘発を公取から受けましたが、氷山の一角で天下りの問題提起はされますが、体質改善はされていません。公務員の削減問題も団塊の世代の自然減を強調する有様です。
一方、上場企業はフジテレビの日枝に代表されるように、北越製紙の三ノ輪など、どいつも、こいつも、みんな自己保身を謀る輩ばかりです。王子製紙の提案は明らかに社会貢献をする提案なのです。既にグローバル時代ですので、仲間内で争っている場合ではないのです。それなのに…地検の行動は意見が分かれるところですが、時代の芽を摘む動き。大切なこの時期に…しかし、この問題はある意味で、地検の行動は正しいのかもしれません。丁度、竹中批判をした産業再生機構の問題と同じです。方法論の問題なので…詳しい解説は省きます。

さて、今日はそんな暗いなかで、二つの問題に光明が差し始めています。最大の株式市場の懸念は更なる下落です。つよばる日経平均株価がマザーズやJQ市場のように、もう一段安する可能性があったのですが、最近の決算数字を見るとその可能性は消え、横這いか上昇の可能性が強くなっています。理由は企業業績です。上の益利回りのグラフを見てください。金利は多少上がりましたが、益利回りが改善しています。松下が果たして目標の売上高営業利益率5%を確保できるのか? 下の四季報数字を参考にしてください。一株利益が70円から95円へ、実に35%アップの改善です。このような業績を背景にし、株価の下落要因はなくなり上昇への心理が強く働きます。

もう一つ心配だったのがソフトバンクの動向です。この会社は先行投資型ですので現状の利益水準で、株価を判断することは出来ません。一つが会社の持っている株式価値です。まぁ、これも売ることができないので、気休め程度の指標ですが…。時価総額が1兆5683億91百万円で発行済み株式総数が1億553万3478株ですので、一株辺り1486円ですね。時価が2060円ですから、遥かに下の位置です。どうしてこの会社の理論価格を説明するのか? 下落する可能性が高くあったのですが…金曜日に一つの考えを披露しました。ドコモとKDDIの合計利益の1/3と言う考え方です。一株利益が212円。我ながらいい着眼点です。この数字にはボーダーフォンの数字が組み込まれていません。
いよいよナンバー・ポータビリティー制度がスタートし、不透明感がなくなります。どんな戦略を打ち出すのか? ソフトバンクの株価は、おそらく、この効果の確認まで横這いなのでしょう。つまり大きく下がる心配が消えたのです。同じく楽天の理論価格を26日の水曜日に検討しています。この株式も、これ以上、株価を下げるのは無理がありますね。PER22倍ですからね。松下を買うより楽天に歩がありそうです。
業績面で全体の株価位置が正当化され、値下がりが続いていた新興株の理論株価が下値水準に入ったことで、大きな下げ要因がなくなったのです。それでは、何故、これほど新興株が下げたのでしょうか?
楽天の年初の高値は127千円です。一株利益が2千円の会社では荷が重いですね。PER60倍ですから…売上が2250億円の会社です。せいぜい50倍が限度かなぁ~? まぁ、常識的には30倍でしょう。一方、ソフトバンクも同じようなもの。仮に一株利益が200円としても現状の利益は通信株なので、PER20倍は限度でしょう。普通はプレミアムを考慮しても15倍でしょうが…、やはり買われすぎていたようです。新興株の多くは、このように過剰プレミアム状態で、理想買いをした事になります。
夢を買った株が下落すれば半値は当たり前。場合によれば1/3もありえます。現実の利益がない分、下落時は一気にメッキがはがれるのが株の世界です。しかし現実の利益が近づいていることも事実です。ここ1年程度、ソフトバンクは先行投資を余儀なくされますが、通常の競争を行う分には投資回収できるでしょう。総務省の指導により赤字は許されませんから、過剰な競争に突入することはなく、この秋の商戦は無難に推移するでしょう。
携帯電話コンテンツ市場の規模拡大も、総務省の調査では昨年39%の拡大ですから、この業界の可能性が高いことが窺えます。成長市場なのですね。故に時間が味方になります。過剰に買われた新興株の洗礼は済み、これから淘汰されます。業績数字に見合った株価への模索が始まるでしょう。追証なので暗かった個人の投資心理が、強気に傾き始めるのです。かたるは昨日の株式教室で「業績相場へ」との示唆を述べました。ようやく、悪夢から抜け出る切っ掛けが起こるのでしょう。
気をつけてください。この時期のカラ売りは非常に危険です。おそらく、これから上がってくる株は企業業績をバックに買う株ばかりのはずです。カラ売りを考えるのは金利が更にドンドン上がってからですね。来年後半以降でしょう。強気に対処されたほうが勝てる見込みが高いと久しぶりに考えた次第です。金利と益利回りの考え方は非常に重要です。以前、かたるはイールド・スプレッドを解説しています。あの時と同じような環境なのです。