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データの捉え方(2013年08月04日)

既に15年程度になるのか…ほぼ毎日原稿を書いていると様々なことに気付きます。メディアの発信する情報と言うのは、恣意的な都合で構成されていると感じます。例えば同じデータの時間軸だけを変えるだけで、受け取る側の印象は大きく変わります。下のグラフに「米国の雇用統計も失業率も大幅に改善しており、金融緩和効果は充分に発揮され、順調に米国経済は改善している」とメディアが述べれば、読者はその主張を簡単に受け入れます。

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次に時間軸をもう少し伸ばしたグラフを掲げ、「FRBの金融緩和成果は確実に景気回復に恩恵を与えていますが、まだ米国の実体は過去の安全な巡航速度まで戻っていません。」とメディアが解説するとなるほど、まだ米国は金融緩和の継続が必要なんだな。…と考えますね。これまでは2006年6月の失業率がピークでこの6.3%を天井で低下していたからですね。つまり過去の悪い数字が見えるから、今はまだかなり改善されても、その当時よりまだまだ失業率は高いと認識するからです。

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このようなデータを一つとって時間軸を変えコメント変えるだけで、FRBの金融緩和が9月か12月かという論争も、自ずと結論が見えてきます。だからデータの時間軸は長いほどよく、恣意的に採用するメディアのマジックには、充分に注意が必要ですね。更に雇用統計は、経済統計の遅行指数です。経済活動の影響が遅れて表面化します。先行指数の景気の実感を問う消費者信頼感指数とは、時間軸が大きく違う事も認識せねばなりません。

今回の2013年の4―6月期において、初めて米国金融は利益を計上しています。間もなくカタルが、何度も述べたGSE(フレーディマックやファニーメイなどの住宅金融会社)が立ち直ります。大恐慌の後、現在のように指標が続々と改善してきましたが、あの時に、早めに引き締めに転換して再び景気を失速させました。日本も同様のミスをしています。基本は銀行なのですね。金融機関に溢れんばかりの利益を与えて、初めて景気が巡航速度に戻るのです。つまり金融機関がリスクを取れないようでは、貸し出しは伸びません。日本は明治以来、蓄えた利益の蓄積を、先のバブル清算で飛ばしてしまいました。だから「失われた時代」が長引くのですね。米国の今回の金融危機は、日本ほど酷くはありませんが、かなり痛手を受けていますね。だから緩和姿勢からの転換は遅いぐらいが丁度いいのですね。おそらくバーナンキ議長が、途中から失業率を目標に変えたことは…彼は大恐慌の失敗を、よく研究しているのでしょう。日本とは大違いです。

さてデータの考え方から、今日はスタートしましたが、今では簡単に自分で色んなデータを集められますから、自分で研究するには、便利な世の中になりました。米国のデータは歴史的な検証が出来るようになっており、日本と違い良いですね。日銀のデータなどは途中で新基準に変更され、しかも昔のものがなく…日本と言う国は軽い国だとも感じますね。まぁ与太はこの位にして昨日の続きですね。

実は今回の決算に二つの点にカタルは注目しています。一つは空洞化の弊害ですね。富士通ゼネラルがタイや中国で生産した製品を日本に逆輸入して、販売し為替損失を掲げている点です。生産性の向上などを上回る為替推移だったのです。もう一つがホンダの決算ですね。昨日も少し触れましたが、記事を読むとホンダは、為替予約がアダになり339億円もの減益幅を広げたとあります。この記事は重要で、本日の日経新聞には42%を超える経常増益との文字が躍っていますが、実はもし為替予約などのヘッジをしなければ、もっと利益が伸びていた可能性があります。だから7-9月期の方が高い水準の為替予約も入れてないでしょうから、より増益幅が大きくなる筈です。この決算数字が反映されるのは11月頃ですから、本格的な株価上昇が、秋になると言う相場のシナリオを、当初は支持をしており、日経平均株価はその前の8月9月は休むと考えていたために、株価が下がると言うシナリオを採用していたのです。

ところが…金曜日の上げは、少し違和感を覚えた訳で、昨日の株式教室に記事になったわけです。現状ではどちらか判断が付きません。…ですが当初から全体相場は大きく上がらなくとも、個別株が賑わう展開はあるんではないかと考えてもいました。相場のエネルギーは以前ほど落ち込まないとする考え方ですね。昔はそうだったのです。右肩上がりの時代は、全体相場が休む時は個別の仕手株が賑わっていました。その展開を予想している為に、この時期には小型の銘柄に注目している訳ですね。果たして相場観を修正する必要があるのかどうか…もう少し展開を見ないと分かりませんね。まだ貧乏人は慎重に構えねばならないのでしょう。