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テクニカル(乖離率)(2006年01月14日)

前回までで簡単ですが、相場サイクルと景気動向の見分け方のシリーズを終える事にします。少し初心者には難しかったかもしれませんね。実は株式市場の物色動向は、基本的な景気循環波動に沿って、時代の変化が相場の流れに加わるのですが、そこまで考え始めると、かなり専門的で難しくなりますので、機会があれば、今後その説明も加え解説したいと思います。

ネット世代の多くの方が、株は「はじめて」と言ういう方は多いでしょうから、これからは少し簡単に、テクニカル分析とファンダメンタル分析を交互に解説していきましょう。今回は多くの皆さんが、最初に入るチャート分析を、テクニカル面から解説します。「今日の市況」でかたるは、最近、良く乖離(かいり)問題を取り上げています。その理由を今日は説明したいと思います。

市場参加者は、様々な立場の人が参加しています。機関投資家の人もいれば、経営サイドの株主もそうでしょうし、最近話題になっているネット・トレイダーもそうでしょう。このネットで売り買いをする人の中には、日ばかりと言い、今日買って、今日売るという短期の投資家の人も大勢いることでしょう。所謂、ディー・トレイダーと言う人達ですね。ネット証券の手数料が安くなり、証券会社のディーラーとネット投資家の差はなくなりました。短期で勝負をする人が増加した為に出来高も増加しています。サラリーマンの人も、最近は携帯電話などを使い、売り買いをするようになってきました。かたるのお客様の中にも、サラリーマンの方が居られます。

ここで考えていただきたいのは、自分の考えが市場参加者の総意ではないと言う事です。自分の株に対する見方は、その相場に参加している人達の少数意見なのです。同じ考えを持つグループも市場参加者の定義からすれば、やはり少数派でしょう。だから時間軸を伸ばせば、伸ばすほど、市場参加者は増えて、自分の考えの正当性はドンドン薄れていくのが、道理だということは理解できると思います。

故に必ず市場は、調整を要求するのですね。市場参加者の全ての意見の一致を見るには時間が必要なのです。これが乖離調整なのです。乖離(かいり)とは、「そむき、はなれること。」と辞書ではなっており、岩波の国語辞典によれば、「同一類概念に包摂できない概念」と載っています。株式市場のテクニカル分析では、普通、株価の移動平均線からの乖離率を指します。移動平均線は5日線、25日線、13週線、26週線、52週線などを用います。現在、付けている株価が移動平均線から、何%、離れているか?これが乖離率ですね。

さて、最初に結論から述べましたが、様々な市場参加者が参加している以上、現在付けている株価は市場からの容認を得なくてはなりません。その為には時間が必要になりますね。今付けている株価は仮の姿なのです。市場の容認を得て、初めてその株価が正当な評価に変わるのです。さて具体例を見て行きましょう。下のチャートは最近人気になったダイワボウの日足です。多くの皆さんは2ヶ月でも長いと感じるでしょうが、左側のチャートが2ヶ月と少し経過したものです。右側のものは、ほぼ1年間で見たものです。

r20060114a.gif

さて上のチャートで注目していただきたいのは乖離率ですね。この乖離率は13週線を用いています。一番高いときは182%ありました。つまり過去13週間にこの株を買った人は、平均で3倍近くなっていると言うことですね。潜在的にこの株を利食いできる人は大勢いるということです。更なる上値を追うためには、その人達の利食いする玉を買わなくてはなりません。

短期で儲けようとする人と、利食いする玉との綱引きが続くのですね。業績動向が背景にあれば、株価は何れ上値を買う人が増えます。PER10倍なら800円の株価を維持するには、一株利益が80円必要ですが、この会社の今期一株利益予想は9.5円(四季報予想)。一株純資産は212円です。仮に理論的に最大限の評価をしてPER30倍に買って、純資産を加えても、9.5×30+212=497円が最大の評価でしょう。金曜日の株価670円はファンダメンタル評価をする人から見れば、高すぎるので売りに評価になりますね。

再び、チャートの動きに注目して下さい。期間を長く捉えると、当然のことですが、価格帯別出来高も変わります。下値で買った投資家は利食いのチャンスを窺っているわけです。株価が下がってくると、高値で買った人も業績面で買えないので、戻ったら売りたいとの心理に、投資家心理は変わっているでしょう。つまり今の株価は辛うじて、全体市況が好調なので維持していますが、仮に全体市況が下げ相場になれば、売り圧力が増し、現在の株価を維持できるか疑わしくなりますね。

しかし物事は単純ではありません。この会社の発行済み株式総数は、僅か1億3660万株です。全ての株を買えば、株価は当然上がります。ここに需給問題が出てくるのです。長期的にはファンダメンタルを無視して株価を維持できないでしょうが、短期的には高値を維持することはお金さえあれば可能です。嘗て、宮地鉄鋼と言う会社が仕手集団の誠備と言う投資グループによって買い占められ、馬鹿高値(200円ぐらいから2950円まで)を付けたことがありました。しかし結果は、経済的な論理性がない投資が成功することはありませんでした。仕手グループの誠備は崩壊しました。

必ず高騰した株は調整と言う試練を受けます。移動平均線からの乖離率が高くなればなるほど、株価の急落による調整(値幅調整)を強いられるか、長い時間をかけ移動平均線が上がるのを待つ調整(時間調整)を強いられるのです。その理由は潜在的な売り要因を、消化しなくてはならないからです。だから乖離率が高くなったら、どんなに有望に見えても、利食いを増やし乖離の縮小を待つ勇気も必要になります。