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狩猟民族と農耕民族(2011年10月23日)

ヨーロッパの金融問題は峠を越えそうに見えます。
しかし今回の危機を救えたとしても、金融機能が痛み、貸し渋りからの景気悪化が心配され、前途多難な解決策のようです。もともと9%の自己資本比率規制と言うのは、妥当な水準なのかどうか…。我が国の金融機関の利ザヤは、どの程度なのでしょう? 

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日銀統計によれば、現在の基準金利が0.3%で、貸出金利の総合では1.082%となっており0.7%の利ザヤしか稼げない世界です。仮に定期預金の0.119%の平均金利を導入しても、利ザヤは1%も確保できないありさまです。故に国内金融機関は与信経費などを考えれば、運用に合理的な国債購入を進め、経済が停滞しているのでしょう。地方金融では預貸率が50%を割れる県が11もあり、40%以下の預貸率しか維持できない地方金融の実態が浮かび上がります。日本では完全にレバレッジが効かない実体経済の世界になっています。

お金は過去の遺産である、失った公共事業投資に向かい、未来への市場経済の株価は低迷したままですね。見方を変えれば、日本のお金が、過去の清算に使われているからデフレになっているのです。未来の投資にお金が向かえばインフレになるとも言えます。自己資本比率規制を高めるとは、こういう結果を生むケースもあります。金融危機の弊害が保守的な概念を生み、先進国は成長力を失う訳です。日本がデフレ先進国と言う実態を貸出金利から見ても分かりますね。さて「過去かたる」を実践しても仕方ありません。僕のペンネームは「未来かたる」です。

NY市場の株価を見てみると、心配した峠を抜けそうに見えます。
日本人は農耕民族なので敗戦もジッと受け入れました。今、僕は花村萬月の「ワルツ」という小説を読んでいます。内務省は占領軍兵士相手の女郎屋である特殊慰安施設協会を発足させ、銀座7丁目で売春婦集めをしたのだそうです。その予算を組んだのが池田隼人だったとのくだりがあります。その募集の仕方が卑劣で「ダンサー及び事務員募集、年齢18歳以上25歳まで、宿舎、被服、食料全部支給」となっており1000人以上の素人娘が参加したと言います。その後も増え続け7万人の人間が終戦後、米軍の慰安に充てられたとか…。まぁ、治安と言う目的を考えれば、国策として已む得ず、予算を組んだのかもしれません。

この小説のくだりの中で、特攻崩れの城山は、天皇陛下が「新日本建設に関する詔書」を述べられ、「天皇は現人神にあらず」とある記述を見て動揺するが、一緒に生活していたパンパンの紘子が「なんで陛下は責任をとらないのよ? 陛下の赤子が鬼畜米英の兵隊に股ぐらを開かなければならなくなったんだよ。でも陛下は宮城でぬくぬくしてらっしゃる。いい気なもんだよ。どうせ、これだってGHQかどこかに無理やり言わされたんだと思うな。お偉いさんは言いなりじゃない。無様だったらありゃしない。威張っていた人ほど、だらしがないんだからさ」と言うセリフを吐いています。

すこし論点を外れたけれど、敗戦にも従順な日本人と、狩猟民族の欧米人では同じ構造の金融危機でも対処が違うのでしょう。果たして日本のように失われた時代を続けるのか…それとも脱することが出来るのか、今はその試練の時ですね。そこでNY市場のチャートを金融危機の時と比べると…2008年末からは、一度、この低迷から立ち上がるかに見えましたが、再び翌年の2月まで沈み駄目押しを入れています。しかし今回は金曜日のNY市場の上げで、下値のボックスを抜けましたね。抜けた直後に、一気に再び割れるケースもありますが…2008年とは違い、一旦は綺麗にクリアしています。ただボックスを離れる時は、時々だましを形成することもありますから…もう少し観察は必要ですが、意外に一気に抜けるかもしれないことを市場は示唆しています。

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